コラム

ロボット先進企業はアマゾン、グーグル、アップルの時代

2013年12月13日(金)14時08分

 アマゾン、グーグル、アップル。今、アメリカのテクノロジー業界の代表的企業がすべて、ロボットに目を向けている。

 ドローン(無人航空機)を使い、即日配送をしようと目論んでいるのがわかったのは、アマゾン・ドットコムだ。アマゾンはこれまで注文したユーザーと商品、配送センターを最短で結んで、より速く「お客さま」に荷物を届けようとロジスティックスを極めてきた。人口密度も低い広大な国でアマゾンが数日内の配送を実現してきたのは、涙ぐましいほどの努力の結果だ。だが、どんなに頑張っても最後のマイル、つまり配送センターからお客の家までの道路運送がこれ以上速くならない。

 そこで空輸、そしてドローンを動員とは、アマゾンにしかできない芸だ。アマゾンのビデオを見ると、即日どころか30分内の配送を目指しているようで、ややこしいハイウェイも森も湖も飛び越えて、直線距離で客の家を目指す。ドローンは、目的地を指定すれば自動的にそこへ向かって飛ぶようになっており、それがロボットとされるゆえんだ。

 アマゾンはこれ以前にも、ロボットを導入している。昨年買収したキバ・システムズというロボット企業の技術がそれだ。キバのロボットは、倉庫の中で自動的に荷物を移動させる。これまで倉庫作業員は商品を取りに行っていたのだが、それが今はロボットが自分の手元に商品を持ってきてくれるので、それを箱に詰めるだけだ。従来のベルトコンベヤーは固定していた一方で、こうしたロボットはプログラムによって自在に動けるところが違う。

 アマゾンでは3つの配送センターですでに合計1400台のキバ社製ロボットを採用している。ぶつからないように、しかしかなり迅速に縦横に移動するロボットの風景は、これまた圧巻だ。

 グーグルは、先だって7社ものロボット新興企業を買収していたことが明らかになって、世間を驚かせた。そのうちの1社、シャフトは日本企業である。

 ただ、自走車を開発するグーグルのことなので、ロボットに進出しても決しておかしくない。自走車は、モーター、センサー、コンピュータ・ビジョンを備えたロボットに他ならないからだ。

 ただし、グーグルはロボットを商品化しようとしているわけではなく、ちょうどアマゾンのように自社の商売に利用するもくろみのようだ。その商売とは、これまたアマゾンと同じく物品販売。アマゾンに何年も遅れを取ってきたオンライン・ショッピングにいよいよ本気で乗り出す計画らしく、その準備を着々と進めているのだろう。荷物をトラックに搭載したり、移動させたりするのに役立ちそうなロボットが多い。そのうち、自社製造の製造現場にも使うのではないかともうわさされている。
 
 アップルは、直接ロボットに関わっているわけではないものの、先だって買収が明らかになったイスラエル企業、プライムセンスはロボットに技術を提供してきた会社である。空間にあるモノや動きを精密に認識する技術を開発する。これを使えば、もうパネルにタッチなどせずに、人差し指を立てるだけで入力ができたりする。

 アップルがプライムセンスの技術を何に使うつもりなのかには諸説あり、アップルTVの入力用、あるいはマップ用に店や建物の内部を三次元でキャプチャーするのではないかという。

 いずれにしても、このロボット潮流はかなり興味深い。そしてポイントは以下だ。

 まず、先端的な企業がいち早くロボットを使い始めたこと。それも、従来の製造業ではなくてサービス産業やメディア産業で、である。

 そして、そのロボットはわれわれが想像していたようなヒューマノイドなロボットではなくて、それを噛み砕いた「ロボット技術」であるということ。ここから今後徐々に発展していくのだろう。

 もっとも重要なのは、テクノロジーはどんどん進化を遂げていて、インターネットから今まさに次世代のロボットや先端的なモノの時代に移りつつあるということだ。あと、5、6年もすれば、われわれ自身もロボットを使いこなしているかもしれない。

 その意味では、アマゾン、グーグル、アップルの3社は、相変わらずわれわれに新時代を感じさせてくれる存在なのである。

プロフィール

瀧口範子

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』、『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち: 認知科学からのアプローチ(テリー・ウィノグラード編著)』などがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story