サッカーを食べ、サッカーを飲み、サッカーと寝る国より
世界(ブラジル)は東京オリンピックをどう見ているのか/前編
◉遂に始まったスポーツの祭典
7月23日(金)のオリンピック開幕が近づくにつれ、国内のスポーツ系チャンネルは積極的なプロパガンダを行い、各スポーツの特集を組み、視聴者がオリンピックに興味を持つ様に仕向けていた。
また、真面目なニュース系チャンネルは現在のサンパウロと東京の都市の現状比較を行っていた。
こちらと比べて比較的に安定はしているが、Covid-19への感染者が徐々に増えている事や、オリンピックを開催する事に日本人の殆どが反対をしている事、無観客である事などを扱っていた。
これらに対して開催に対してのネガティブな意見はコメンテーターからはなかった。
※開幕前の日本の状況を伝えるブラジルの公共メディア/AgênciaBrasil
・日本人の殆どが反対している
・都内の感染者が増えつつある
・オリンピック選手村と都内住民との感染リスクはゼロである(バッハ会長談)
・7月1日〜21日までで、すでに75名の陽性者が出ており、そのうち6名が選手である
ブラジルで日本でのオリンピック開催を声高にしている人はいない。
開催可否が決まるまでは、延期や中止という選択肢もあるのではないかという意見もあったが、中止が無いと判断した時期からは一切その議論は無くなった。
※開会式の様子を伝えるブラジル日刊紙/Correio Braziliense
・前回の東京オリンピック1964は世界大戦からの日本の復興となる大会であった
・今回はパンデミック下の世界の希望の象徴として大会を開催する
・自国ブラジルは151番目に入場
・パンデミック対策として選手4人の入場となった
開会式が無事に終わり、各競技が一斉に始まった。
オリンピック競技の中で一番人気のセレソン(サッカー男子A代表)が、7−1のミネイロンの悲劇以来の宿敵・ドイツを4−2で破った。
ブラジルにとっては幸先の良い出だしである。
元来ブラジル人はスポーツ好きであり、お祭り好きでもある。
リオ・オリンピック2016やサッカーワールドカップ2018の時は、バールやレストランもお祭り騒ぎだった。
オリンピックやワールドカップでセレソンの試合がある時は、会社が休みになるか勤務時間であってもTV観戦をする権利がスタッフにも与えられているブラジル。
※見せないでスタッフに訴えられたら、裁判で負ける事例あり
そんな状態を何度も見てきたせいか、Covid-19の影響で規制がある為とはわかっていても、静かに観戦しなければいけない今回の大会は少し寂しい。
TVを観ていても、最新の設備を備えた大きな会場で無観客の試合にはどこか物足りなさを感じてしまう。
勿論、一スポーツファン、スポーツに関わってきた人間としては、この状況で開催されるだけでも有り難い事ではある。
日本国内では大会開幕直前まで、開催反対の声が出ていたり開催中も中止運動が続いていると聞いている。
016年のリオ五輪でも同じ様に反対派のデモや抗議はあったので、これはCovid-19の有無に関わらず起きる事であり、各国・各大会において大なり小なりある。
ここ最近の都内の感染者上昇や一般市民への緊急事態宣言とオリンピック開催の矛盾などの理由でデモや抗議をされている方がいる。
オリンピック選手、関係者からの日本国内への感染拡大を懸念する方もいる。
一つの意見としては分かる。
・都内で3日連続4,000名以上の感染者が出ている
・ワクチン接種率が低いので、未接種が多い年齢層に影響が出る
・オリンピック関連では193名の陽性者が出ており、そのうち20名は選手である
・大会側は、オリンピックの為に来日した外国人スポーツ選手からの都民への感染は確認できていないとコメント
ただ、その矛先が選手個人のSNSや、競技中の選手へ向かったとも聞いているので、そこは残念でならないし、間違っていると思う。
議論をする、意見をぶつける大前提として、それぞれの役割をきちんと把握してから行う必要がある。
・参加する選手
/自国を代表して自分の専門競技で結果を出す
・主催、運営、大会関係者
/安心、安全な大会の開催、運営、関わる人に満足して頂き、レガシーを残す
主催、運営、大会関係者に、金メダルとって下さいとはお願いしないはずである。
ところが逆の事例は起きるのである。
参加している選手は、決められたルールに則って、参加権利を獲得し、現状で色々な問題がある中で、出場を選択しこの大会に臨んでいる。
色々な思いや責任を背負って国の代表として戦う選手達を心の底から応援してあげたい。
◉東京五輪をどう見せたかったのか、見られたかったのか
世界はどうこのオリンピックを見ているのか。
世界各国の状況は、各国にお住いの方々にお任せする事にしたい。
筆者が住んでいるブラジルはどう見ているのか...。
その前に、まずは、日本側がこの東京五輪2020をどう見せたかったのかを確認してみる事にする。
オリンピックを招致し、開催国として立候補するには、各都市なりの狙いがある。
また行政だけでなく、オリンピックに関わる企業や団体、業界にも同じ様にある。
東京オリンピックの場合はは下記の様なモノがあげられる
①東京都オリンピック・パラリンピック準備局
②公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会
③建設業界
④食品業界
FNNプライムオンライン/2020東京五輪で『ジャパニーズフード』をアピールするために、まだ足りないこと
これらの計画は、Covid-19ウイルスが世界中で猛威を振るう前に作成されたモノであり、無観客試合や外国人の日本への入国禁止などは想像も想定もされていない。
その為、物理的、法律(条例)的に実現が不可能になったモノもある。
但し、理念やレガシーという考え方がそこに存在するのであれば、手法や対応を変えても伝わるはずであり、何かしらの動きがあるだろう。
そして、受け取った側にも何らかの変化があるはずである。
次回はそういった目線で、東京・日本側が見せたかったモノと、ブラジル・世界が見てるモノを比較していきたい。(後編へ続く)
著者プロフィール
- 古庄亨
ブラジル・サンパウロ在住。日本・ブラジル・タイの3ヶ国で、2010年までフットサル選手としてプレー。2011年より5年間、都内スポーツマネージメント会社勤務。2016年ブラジルに渡り翌年現地にて起業。サッカーを中心にスポーツ・教育関連事業で活動中。
Webサイト: アレグリアスポーツアカデミー・サンパウロ
Twitter: @toru_furusho