コラム

ロシアによるウクライナ軍事侵攻以後の世界を想定する

2022年02月28日(月)15時35分

ロシアは多くの権威主義国の体制を支援しており、それらの国々に存在する過激派・テロリストのネットワークなどを抑圧することに役立っている。そのため、ロシアが政情不安に陥ることで、欧米がカバーできていない権威主義国がテロリスト勢力によって不安定化しドミノ倒しとなるリスクが生じる。

そして、それらの国々はテロリストにとって活動しやすい天国となっていくだろう。当然であるが、力を付けたテロリストはテロ行為を同国以外にも輸出していくことになる。それは冷戦後に発生した対テロ戦争と同じ構図が再び発生することを意味する。SNSなどの発達した情報システムはテロの輸出を以前よりも遥かに容易に行うことを可能とするだろう。

仮に米国内または欧州国内で大規模なテロが発生した場合、米欧中がどのような枠組みでテロに対応するかによって、米中対立の構図にもスピード感を含めた変化が生じることになる。テロ対処の観点から米中対立が表面上は一旦手打ちとなる道も可能性として見据えるべきだ。

現実には上記の2つのパターンの間で落としどころが見出されることになるのだろうが、その場合は双方のパターンのリスクが同時に発生することになる。ロシアによるウクライナ侵攻がどのような結果に終わったとしても、我々はこの出来事が「世界を既に変えてしまった」という認識を持つ必要があるだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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