コラム

米国のワクチン開発・製造政策(OWS)は本当に有効だったのか

2021年07月12日(月)16時45分

この主張に従うと、当該政策を産業政策の成功と呼ぶことには些か無理があり、せいぜい既存の企業努力を後押ししたと言える程度のものだったと言えるだろう。(企業は初期段階では余計な政府介入を警戒していたし、事後に公金投入を根拠にワクチンの特許放棄を迫る米政府の行動は企業側の懸念を正当化するものであったように思う。)

政府の産業政策を闇雲に肯定することの危うさ

戦争やパンデミック時には通常の場合では肯定されないレベルの補助金や市場介入が容易に正当化されるものだ。その際にカウンターパンチを食らわせる言論が存在していることは社会の健全性を保つために必要である。

政府の産業政策を闇雲に肯定することは、非効率な産業構造と非合理な判断を行う政府を生み出すとともに、中国の国家資本主義体制を正当化することにつながる。それは自由主義陣営の敗北に繋がる議論であるとともに、人々に不幸な結果をもたらすことになるだろう。

現在、自由主義陣営で行われつつあるサプライチェーン網の見直しのように、強権的な政府が存在する地域への一部の投資を改めることは、安全保障上の必要性を満たすとともに当該政府の態度を是正するためにも重要なことだ。

しかし、それが半導体などへの政府の巨額投資・積極介入を正当化するものであるかは、今一度再考が必要だと言えるだろう。既に日本政府においても産業政策に群がる腐敗の匂いが漂ってきている気がしてならない。

リバタリアン系シンクタンクの主張が存在することは健全な政策を有権者が選ぶ上で望ましいことだ。日本にもCATO研究所のような優れたリバタリアン系シンクタンクが誕生することを切に願っている。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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