コラム

バイデン政権初の連邦レベル選挙、米テキサス州の下院補選が象徴する共和党の実相

2021年04月28日(水)16時45分
トランプ元大統領

補欠選挙の推薦もトランプ元大統領らしい行動原理に基づくものだった...... REUTERS/Carlo Allegri

<バイデン政権下で行われる初の連邦レベル選挙となるテキサス州連邦下院第6区の補欠選挙では、共和党の現状が浮き彫りとなっている......>

ドナルド・トランプ元大統領がテキサス州連邦下院第6区補欠選挙においてスーザン・ライト女史への推薦を行った。ライト女史は補欠選挙の原因となったコロナで亡くなられた故ロン・ライト下院議員の妻である。

タラント郡の南西部、エリス郡、ナバロ郡を含む選挙区の連邦下院の空席を埋める当該補欠選挙は、バイデン政権下で行われる初の連邦レベル選挙としても注目されている。

共和党内の三つ巴状況を象徴する3人の有力候補

3月3日の締め切りに11人の共和党員と10人の民主党員を含む23人の候補者が立候補を申請する大混戦となってはいるものの、2か月間のレースの早い段階から、共和党スーザン・ライトは同選挙で優勢である共和党内の最有力候補と見なされてきた。

故ロン・ライト議員は保守派フリーダムコーカスのメンバーであり、活動資金面で保守派資金提供団体であるクラブ・フォー・グロースに依存してきた人物だ。当然、スーザン・ライト女史もその政治的遺産を引き継ぐ人物である。地域の政界有力者もライトを推しているが、草の根的な広がりに欠けるため、個人献金の集まりは良好とは言えない。

一方、共和党内の主要ライバルは州議会議員のジェイク・エルゼイ氏、保健福祉省の元首席補佐官ブライアン・ハリソン氏の2名が挙げられる。

エルゼイ氏は2018年に故ライト議員と予備選挙で激戦を繰り広げた人物で、テッド・クルーズ上院議員ら保守派の一部から反トランプ系の候補者として強烈な攻撃に晒されている。彼はリック・ペリー元テキサス州知事からの推薦を盾として、それらの批判に対抗しており、同氏を支持する人々からも多額の個人献金も集めている状況だ。

ハリソン氏もトランプ元大統領との繋がりを匂わせながら、37歳の若さも相まって多額の個人献金を集めることに成功してきた。トランプ政権下での政府関係者による支持リストを公表し、自らの正当性を高める作業をしてきた。その他の候補者としてはトランプ元大統領との縁を主張するプロレスラーのロディマー氏なども存在している。

保守派であるライト、主流派系であるエルゼイ、トランプ系であるハリソンという3人の候補者の存在は、共和党内に存在する三つ巴状況を象徴するものだと言えるだろう。選挙区によって各勢力間のバランスは異なるだろうが、今後も共和党内の予備選挙で同じ構図が作られていくと見るのが妥当だろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

10月コンビニ売上高は8カ月連続増、気温低下・販促

ビジネス

首都圏マンション、10月発売戸数28.2%減 23

ワールド

中国原油輸入、10月はロシア産が今年最高 クウェー

ワールド

サウジへのF35売却、イスラエル運用機より性能劣る
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 8
    ホワイトカラー志望への偏りが人手不足をより深刻化…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    衛星画像が捉えた中国の「侵攻部隊」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 6
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story