「白米はよくない」? 健康と環境の両面で知ったこととは
これは主にメタンガスの排出問題を指している。メタンと言えば、二酸化炭素の約25倍の温室効果がある気体。世界では稲作がメタン排出量の12%を占めており、航空機が出す総量に匹敵するという。
日本だけでもメタン排出量の実に約42%が水田からだ。稲作は温暖化にかなり「貢献」していると言える。
困ったことに、稲作が促す温暖化がその稲作に悪影響を及ぼしている。世界の平均気温が1度上がるにつれ、稲の収穫量が1割減るという研究結果が出ている。
稲作技術の大きな進歩がなければ、温暖化と低収穫化の悪循環が進む。日本では少子化でも、アジア全体では2050年までに現在の47億人から53億人へと人口が増える。
また同時期、アフリカ大陸の人口は現在の14億人から25億人へと急増する。これで米の需要は、さらに30%増加する見込みだ。
日本では「米離れ」が進んでいる。どういうわけか、人々の好みはパンやパスタに少し移りつつある。それらの原料である小麦は運よく、米と比べてメタン排出が問題になっていない。
また、パスタ(そして全粒粉のパン)は血糖値が上昇する速度が白米より遅いので、健康面でも優れた選択肢だ。そうした意味では、環境や健康を考えているかどうかはともかく、日本人の米摂取量が減っているのは喜ばしい傾向だろう。
消費を気にかけたほうがいい食品と言えば、牛肉もよくやり玉に挙げられる。畜産による土地や水をはじめとする資源の乱用や、温室効果ガス排出が問題視されている。
健康の面でも、その過剰摂取が例えば心血管疾患につながる危険性がある。
こうした話を聞いて、大豆などを原料とする代替肉に乗り換え始めている人もいると思うが、筆者は20年も前からいくぶん、牛肉の消費を控えめにしてきた。
今回、友達から投げかけられた白米に対する指摘に対しても似た対策を取るつもり。食生活の大革命もせず、問題を完全に無視することもせず。
まず、白いご飯を食べる頻度を気持ち程度減らしてみようかな。健康のために、環境のために。
トニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点に活動。ベストセラーとなったコミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)シリーズの主人公。
アマゾンに飛びます
2025年12月16日号(12月9日発売)は「ジョン・レノン暗殺の真実」特集。衝撃の事件から45年、暗殺犯が日本人ジャーナリストに語った「真相」 文・青木冨貴子
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い 2025.12.07
死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の意味を考えていない 2025.12.06
高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい 2025.12.03
文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗り越えられる 2025.11.13
外国人投資家の不動産爆買いに迷惑しているのは日本人だけではない 2025.10.23
報じられなかった中国人の「美談」 2025.10.22
ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳 2025.10.17






