コラム

「白米はよくない」? 健康と環境の両面で知ったこととは

2023年06月04日(日)12時00分
トニー・ラズロ(ジャーナリスト、講師)

これは主にメタンガスの排出問題を指している。メタンと言えば、二酸化炭素の約25倍の温室効果がある気体。世界では稲作がメタン排出量の12%を占めており、航空機が出す総量に匹敵するという。

日本だけでもメタン排出量の実に約42%が水田からだ。稲作は温暖化にかなり「貢献」していると言える。

困ったことに、稲作が促す温暖化がその稲作に悪影響を及ぼしている。世界の平均気温が1度上がるにつれ、稲の収穫量が1割減るという研究結果が出ている。

稲作技術の大きな進歩がなければ、温暖化と低収穫化の悪循環が進む。日本では少子化でも、アジア全体では2050年までに現在の47億人から53億人へと人口が増える。

また同時期、アフリカ大陸の人口は現在の14億人から25億人へと急増する。これで米の需要は、さらに30%増加する見込みだ。

日本では「米離れ」が進んでいる。どういうわけか、人々の好みはパンやパスタに少し移りつつある。それらの原料である小麦は運よく、米と比べてメタン排出が問題になっていない。

また、パスタ(そして全粒粉のパン)は血糖値が上昇する速度が白米より遅いので、健康面でも優れた選択肢だ。そうした意味では、環境や健康を考えているかどうかはともかく、日本人の米摂取量が減っているのは喜ばしい傾向だろう。

消費を気にかけたほうがいい食品と言えば、牛肉もよくやり玉に挙げられる。畜産による土地や水をはじめとする資源の乱用や、温室効果ガス排出が問題視されている。

健康の面でも、その過剰摂取が例えば心血管疾患につながる危険性がある。

こうした話を聞いて、大豆などを原料とする代替肉に乗り換え始めている人もいると思うが、筆者は20年も前からいくぶん、牛肉の消費を控えめにしてきた。

今回、友達から投げかけられた白米に対する指摘に対しても似た対策を取るつもり。食生活の大革命もせず、問題を完全に無視することもせず。

まず、白いご飯を食べる頻度を気持ち程度減らしてみようかな。健康のために、環境のために。


NW_Tony_Laszlo.jpgトニー・ラズロ
TONY LÁSZLÓ
1960年、米ニュージャージー州生まれ。1985年から日本を拠点に活動。ベストセラーとなったコミックエッセー『ダーリンは外国人』(小栗左多里&トニー・ラズロ)シリーズの主人公。

ニューズウィーク日本版 日本時代劇の挑戦
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月9日号(12月2日発売)は「日本時代劇の挑戦」特集。『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』 ……世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』/岡田准一 ロングインタビュー

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story