入管スリランカ女性死亡 韓国やインドなど各国にある人権保護機関がなぜ日本にない?
どの国でも入管は外国人には不快な施設だが(東京入管) YUYA SHINOーREUTERS
<日本のような先進国で、なぜこんな事件が起きるのか。国連からも設置を求められる人権機関の存在は、再発防止に役立つはずだ>
今年の1月にビザ更新のため東京出入国在留管理局に行った。新型コロナウイルス感染対策のため入館制限があり、番号札を受け取って順番待ちをした。長蛇の列は建物を囲むように続き、外で1時間半ほど待った。最高気温9度前後の中の1時間半待ちはなかなかつらい。
東京入管も努力はしているのだろうが、在留外国人に対するサービスが飛躍的に丁寧になっている区役所や税務署などほかの行政機関と比べると、率直に言って見劣りがする。そもそも業務時間も区役所などより短く、電話をしてもつながらない。番号札もインターネットで予約できるようにしてくれたら良いのに、と思った。
もちろん、もともと自国民を相手にするところではない入管は、世界中どの国でも外国人にとっては不愉快な思いをすることがあり得る場所だ。以前アメリカのある大学の研究所から招待され訪米したときのこと。シアトルの空港の入管で止められた私は、両脇に銃をぶら下げた大柄な係官に別室に連れて行かれ調査された。1歳だった娘と母が一緒だったので不法移民と思われたのかもしれないが、その時に受けた威圧的な対応は忘れられない。きっと韓国の入管でも、不便で不親切な経験をした日本人はいるだろう。
しかし、日本では私が経験した不便さ、不快さとは比較にならない事件も起きている。3月6日に名古屋入国管理局で、収容中のスリランカ人女性が入院などの措置も受けられずに死亡した事件だ。日本のような先進国でなぜこんなことが起きるのか正直びっくりした。
この問題については上川陽子法相が調査を指示したと報じられており、より詳しい経緯や再発防止策がいずれ明らかになるだろうと思う。ただこの件で改めて、人権について在留外国人の声や立場をしっかりすくい上げてくれる機関が欲しいとも思った。
単純比較はできないし、網羅的に調べたわけではないが、韓国でもときおり出入国管理事務所関係者による外国人への暴行事件が報じられる。やや古いが、2010年のケースでは不法滞在の疑いで取り調べを受けていた外国人に入管勤務の運転手が暴行を加え、ひざまずいて助けを請うことまでさせた。
この事件では、韓国の国家人権委員会が「人格権、身体の自由の侵害であるのみならず刑法上の傷害罪に当たる」と判断し、運転手を検察に告発し、事件に関係した部署の職員全員を対象にした人権教育の実施を勧告した。
01年に設立された韓国の国家人権委は政府から独立した第三者機関だ。当然、外国人の人権のためだけにつくられたものではないが、韓国国内で起こるさまざまな人権問題を取り扱う。最近では、ソウル市が外国人労働者だけを対象に新型コロナのPCR検査を義務化する行政命令を出したところ、国家人権委が「外国人に対する差別的措置だ」と判断し、ソウル市が撤回した。