コラム

入管スリランカ女性死亡 韓国やインドなど各国にある人権保護機関がなぜ日本にない?

2021年04月06日(火)17時19分
李 娜兀(リ・ナオル)
東京入国管理局

どの国でも入管は外国人には不快な施設だが(東京入管) YUYA SHINOーREUTERS

<日本のような先進国で、なぜこんな事件が起きるのか。国連からも設置を求められる人権機関の存在は、再発防止に役立つはずだ>

今年の1月にビザ更新のため東京出入国在留管理局に行った。新型コロナウイルス感染対策のため入館制限があり、番号札を受け取って順番待ちをした。長蛇の列は建物を囲むように続き、外で1時間半ほど待った。最高気温9度前後の中の1時間半待ちはなかなかつらい。

東京入管も努力はしているのだろうが、在留外国人に対するサービスが飛躍的に丁寧になっている区役所や税務署などほかの行政機関と比べると、率直に言って見劣りがする。そもそも業務時間も区役所などより短く、電話をしてもつながらない。番号札もインターネットで予約できるようにしてくれたら良いのに、と思った。

もちろん、もともと自国民を相手にするところではない入管は、世界中どの国でも外国人にとっては不愉快な思いをすることがあり得る場所だ。以前アメリカのある大学の研究所から招待され訪米したときのこと。シアトルの空港の入管で止められた私は、両脇に銃をぶら下げた大柄な係官に別室に連れて行かれ調査された。1歳だった娘と母が一緒だったので不法移民と思われたのかもしれないが、その時に受けた威圧的な対応は忘れられない。きっと韓国の入管でも、不便で不親切な経験をした日本人はいるだろう。

しかし、日本では私が経験した不便さ、不快さとは比較にならない事件も起きている。3月6日に名古屋入国管理局で、収容中のスリランカ人女性が入院などの措置も受けられずに死亡した事件だ。日本のような先進国でなぜこんなことが起きるのか正直びっくりした。

この問題については上川陽子法相が調査を指示したと報じられており、より詳しい経緯や再発防止策がいずれ明らかになるだろうと思う。ただこの件で改めて、人権について在留外国人の声や立場をしっかりすくい上げてくれる機関が欲しいとも思った。

単純比較はできないし、網羅的に調べたわけではないが、韓国でもときおり出入国管理事務所関係者による外国人への暴行事件が報じられる。やや古いが、2010年のケースでは不法滞在の疑いで取り調べを受けていた外国人に入管勤務の運転手が暴行を加え、ひざまずいて助けを請うことまでさせた。

この事件では、韓国の国家人権委員会が「人格権、身体の自由の侵害であるのみならず刑法上の傷害罪に当たる」と判断し、運転手を検察に告発し、事件に関係した部署の職員全員を対象にした人権教育の実施を勧告した。

01年に設立された韓国の国家人権委は政府から独立した第三者機関だ。当然、外国人の人権のためだけにつくられたものではないが、韓国国内で起こるさまざまな人権問題を取り扱う。最近では、ソウル市が外国人労働者だけを対象に新型コロナのPCR検査を義務化する行政命令を出したところ、国家人権委が「外国人に対する差別的措置だ」と判断し、ソウル市が撤回した。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ブロードコム、供給制約を指摘 「TSMCの生産能力

ビジネス

金価格が10日続落、ドル高や米利下げ期待後退で

ワールド

政府、石油の国家備蓄放出26日に開始 産油国共同備

ワールド

食料品の消費税ゼロ、中長期的な予想物価への影響小さ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店員も「なすすべなし」の暴走モード
  • 2
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 3
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」した──イスラエル首相
  • 4
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 5
    【クイズ】2年連続で「世界幸福度ランキング」で最下…
  • 6
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 7
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    「買ったら高いじゃん?」アカデミー賞会場のゴミ箱…
  • 10
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記…
  • 1
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 2
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 3
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が発生し既に死者も、感染源は「ナイトクラブ」
  • 4
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 9
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 10
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story