最新記事
朝鮮半島

北朝鮮の欧州派兵は第2次朝鮮戦争の前哨戦? 韓国とロシアの最新兵器が砲火を交える日は遠くない

2024年11月18日(月)19時34分
佐々木和義

ロシア軍に置き去りにされる兵士も......

ウクライナ国防情報局(DIU)が11月4日に公表した資料で「北朝鮮軍はロシア航空宇宙軍所属の軍用輸送機28機で前線に送り込まれた」「ロシア軍は北朝鮮軍兵士に60ミリ迫撃砲、軍用小銃AK12、軽機関銃RPKとPKM、狙撃銃SVDとSVF、ATGMフェニックス、携帯型対戦車榴弾発射器RPG7や暗視装置、熱画像カメラ、分光照準器、望遠鏡などを配布」「ロシア極東の5カ所の訓練施設で訓練を受けた」と述べている。

ロシアに送り込まれた北朝鮮軍の第一陣はブリヤートなどで訓練を受けた後、ウクライナ軍が一部を占領しているクルクスをはじめとした前線に投入されたという。ブリヤートはモンゴル系が多数居住するロシア連邦の共和国でブリヤート人と朝鮮人は顔立ちが似ており、識別が難しいと考えたようだ。

ウクライナ高官は、少なくとも7000人以上の北朝鮮兵が10月末までに国境地帯に送り込まれ、一部はウクライナ軍と交戦、相当数が死亡したと伝えている。

またロシア軍と北朝鮮軍の意思疎通ができていない実態も明らかになっている。ウクライナ軍が公開した映像にロシア軍の装甲車が歩兵を残して離脱する場面が映し出された。ロシアのBTR82装甲車3両がクルクスの樹林帯を攻撃した際、ロシア軍兵士が北朝鮮軍とみられる歩兵を残して撤収した映像と分析された。ロシア兵が北朝鮮兵に下車を指示したが、北朝鮮軍は大半が歩兵で、車両や装甲車を基本とするロシア軍の戦術がわからず右往左往し、そのまま置き去りにされたとみられている。

弾よけの兵士を送り、毎月2千万ドルを懐にする金正恩

北朝鮮軍の派兵が伝えられた当初、精鋭部隊が派遣されるという憶測が広がったが、精鋭部隊は少数で、実際の派遣は大半が10代から20代の一般兵だと判明した。経験が少ない兵士らはロシアに行けば十分な食事を摂れると期待したが、極寒のなか食事が支給されない日が続いているという。

対するウクライナは捕虜収容所には温かい部屋と十分な食事があると伝える朝鮮語動画を作成するなど投降を誘引。十数人規模の北朝鮮兵士が脱走したいう未確認情報もある。

国民の海外渡航を制限して国外逃亡を厳しく罰する北朝鮮が、1万人を超える一般兵を海外に派遣したことになる。表向きはロシアと北朝鮮が締結した「包括的戦略パートナーシップ条約」に伴う派兵だが、韓国国家情報院によると、金正恩は派兵1人につき月2千ドル受け取るという。
自国民兵士を「弾よけ」として売り渡したといえるのだ。

一方の韓国だが、国防部長官は国会の国防委員会でウクライナに戦況分析団を派遣するが、あくまで非武装で派兵は行わない考えを示した。尹錫悦大統領も北朝鮮軍の関与度合いに応じてウクライナに兵器を支援する可能性を排除しないが、まずは防衛用兵器からという。尹大統領は「今回の派兵でロシアから北に対し、韓国の安全保障に致命的な脅威になり得る軍事技術の移転があり得ることに加え、時間が経つにつれ北の特殊部隊が現代戦に対する経験を積むことになれば、韓国の安保に致命的な問題になりうる」と強調した。

ウクライナに対する戦争に参加する北朝鮮兵がロシアの最新兵器を使い、それをウクライナ兵が韓国の最新兵器に手に防御できるかどうか。北朝鮮の派兵は、実はロシアと韓国の最新兵器が使用される第2次朝鮮戦争の前哨戦となるかもしれない。

ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正日産、改革費用で通期は6500億円の最終赤字 

ワールド

米台、関税引き下げと米国製品の購入拡大で最終合意

ビジネス

中国新築住宅価格、1月も下落 前年比-3.1%に加

ビジネス

米電力会社が多額投資、データセンター需要で 料金上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 9
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中