最新記事
日本社会

大人の過剰な期待で日本の子どもたちが潰される

2024年11月13日(水)11時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

少子高齢化により、少なくなった子どもへの「期待圧力」が強くなっている。こうした状況のなか、親の養育態度にも歪みが起きやすくなっているのかもしれない(過干渉など)。単純なやり方だが、子どもと大人の人口量を比べることで、前者にかかる圧力の大きさを可視化できる<図2>。

newsweekjp20241113020741-e08d8ccc74bc08ff53d6a1341249a092b83bcc4e.png


1950(昭和25)年では、人口の年齢構成は下が厚いピラミッド型で、子どもと大人はほぼ半々だった。だが時代とともに子どもは少なくなり、大人がのしかかってくる。2000年では大人は子どもの4倍、現在では6倍、近未来では7倍となる。

上が厚い逆ピラミッドの年齢構成で、子ども1人に対し大人6~7人のまなざしが注がれるというのは、ある意味「脅威」だ。教育については、誰もが語れる。大人の多くは教育論議が好きで、下の世代の教育や学校について不平不満を言う。

教育産業も過剰になっていて、少なくなった子どもを奪い合うことに躍起だ。幼子がいる親を見つけては、「早期からの習い事、早期受験が大事だ」などと煽り、顧客に取り込もうとする。親の側も「1人しか持たないと決めた子だから」などと、我が子に鞭を打つ。子どもにこうした重圧がかかるようになっていることは、前述の子どもの自殺動機からも推測できる。

逆ピラミッドの年齢構成で、「一億総教育家」の社会になったら、子どもは窒息してしまう。放任になってはいけないが、「放っておいても子どもは育つ」という心構えも持ちたいものだ。

大人も、子どもの教育についてあれこれ言うばかりでなく、社会の変化にキャッチアップすべく、自身も絶えず学び続けないといけない。学習・啓発の実施率の年齢カーブを描くと、成人期以降は地を這う「L字型」になるのだが、これではとうてい「教育立国」は名乗れない。教育産業や大学も、今後は持てる資源を成人層に振り向けるべきだ。

<資料:警察庁『自殺の状況』

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

金融政策の具体的手法、日銀に委ねられるべき=高市首

ワールド

最近の長期金利、「やや速いスピード」で上昇=植田日

ビジネス

米当局、エヌビディア製半導体密輸の疑いで中国人2人

ワールド

一国の経済財政担う者として金利や為替は当然注視=高
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中