最新記事
ウクライナ戦争

ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに

Russia Claims It Downed F-16 Jet in Ukraine, Gets Brutal Community Note

2024年10月1日(火)09時57分
マーサ・マクハーディー
ウクライナ空軍のF16

ウクライナ空軍の日を記念して飛んだウクライナのF16(8月4日、場所は不明) REUTERS/Valentyn Ogirenko

<ロシア大使館が「墜落」の写真をXに投稿した。ウクライナ人パイロットが死亡した事故もあった一方、戦況を一気に変えると期待されたF16の活躍がまだ見られない背景には、訓練の失敗という噂もある>

ロシア当局がウクライナ上空でF16戦闘機を撃墜したと発表したが、外部からの厳しいファクトチェックで否定された。

9月27日、駐南アフリカのロシア大使館はX(旧ツイッター)に、破壊されたF16の画像を投稿した。F16の尾翼にはウクライナ軍の紋章が付いており、キャプションには「ウクライナ軍のパイロットたちに、F16はどこにあるのかと尋ねてみたら......」というコメントが。つまり、ロシアがウクライナのF16を撃墜した、と言いたいわけだ。

だがこの主張は、あっという間に否定された。投稿に「この写真は2019年に墜落した米空軍のF16のものだ」という「コミュニティノート」が付いたからだ。

駐南アのロシア大使館がイラストまで付けて投稿した疑惑のX投稿を見る

コミュニティノートとは誤解を招く可能性がある投稿に対し、有用な背景情報を提供するために他のユーザーたちが投稿した文章のこと。同じ写真が使われているが全く別の事故を報じた記事へのリンクも複数示された。本誌はロシアとウクライナ両国の国防省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。

この写真は、2019年5月にカリフォルニア州で油圧系統のトラブルが原因でF16が墜落し、13人がけがをする事故が起きた際のものだった。元の画像にはウクライナ軍の紋章は付いていなかったから、ロシア大使館が加工した可能性がある。

怪しげな「報道」が交錯する中......

「(ウクライナの無人機攻撃により)ロシアの弾薬庫の爆発が続く中、士気を高めるため、F16の加工した画像まで公開しなければならないということか」と、軍事アナリストのオリバー・アレクサンダーはこの投稿への返信で述べた。

投稿の前日、ロシア軍はウクライナの西部フメリニツキー州への攻撃を開始した。その後、ロシア政府寄りのメディアはウクライナのF16が5機、破壊されたと伝えたが、これまでのところ公的な発表はない。

テレグラムのロシア政府寄りチャンネル「軍事オブザーバー」もまた、アメリカ人パイロットがフメリニツキー州への攻撃で死亡したと伝えた(投稿はすでに削除されている)。同チャンネルはパイロットの妻のものとされるフェイスブックへのこんな投稿を引用していた。「(夫の)スティーブンは外国人教官プログラムなどという下らないもののせいで亡くなりました。なぜ夫が(プログラムへの参加に)同意したのか分かりません。夫(の遺体)をどうやって移送するつもりなのかも分かりません」。もっとも独立系の調査報道サイト「ザ・インサイダー」が調べたところでは、この投稿は偽物だったという。

確かにウクライナに供与されていたアメリカ製F16のうち1機は、8月にロシアの空からの攻撃を迎撃した際に墜落している。ウクライナ軍によれば、搭乗していたウクライナ人パイロットが死亡したという。

このパイロットは生前、何度もメディアの取材を受け、F16の供与を求めるロビー活動のためにワシントンを訪れたこともあって有名人だった。ウクライナ側には、F16があれば戦況を変えられる、という期待があった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き

ビジネス

トランプ氏、ビットコイン戦略備蓄へ大統領令に署名

ビジネス

米ウォルマート、中国サプライヤーに値下げ要求 米関
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 5
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 6
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中