大型連休控え医療混乱ピークの韓国 病院・研修医・患者が苦境のなか、漁夫の利を得たのは?
秋夕に向け軍医を病院へ派遣したが......
韓国保健福祉部は、軍医官と公衆保健医を公立病院や民間病院に派遣してきたが、秋夕前後に250人を救命救急センターに派遣することにした。公衆保健医は兵役に代えて公衆衛生にあたる医師免許保持者である。
同部は9月4日、軍医官15人を運営に支障が出ている救命救急センターに派遣し、9日以降、235人の軍医官と公衆保健医を緊急度の高い医療機関に派遣すると明らかにした。
ところがだ。軍医官や公衆保健医の評判はお世辞にも良いとはいえない。ソウル大学病院が行ったアンケート調査で、軍医が「役立った」と答えた教授は30.9パーセントにとどまる一方、31.8%が「役に立たない」と回答した。未回答者は軍医等が派遣されなかった科目の教授で、派遣を受けた教授の半数以上が「軍医は役に立たない」と回答したのである。「軍医らを救急室に配置すれば、患者未収容がなくなるか」という質問にも教授らは「彼らは重症患者の診療に参加して、責任を負わなければならない状況となることを恐れている」と回答した。
軍医官3人が派遣された梨花女子大学木洞病院は、救急室勤務は適していないとして帰るよう通知した。江原大学病院では派遣された5人のうち実際に勤務できたのは1人だけだった。保険福祉部が派遣する250人の軍医官と公衆保健医には救急医学の専門医が8人いるが、その専門医でさえ役に立たないという。救急専門医が2人派遣された世宗忠南大学病院は、軍医は診療できないと判断している。
漁夫の利を得たのは......
一方で辞職した研修医たちは就職難に直面している。兵役未了者は公衆衛生医を目指すが、服務期間は3月からで、志願者が多いと翌年以降に延ばされる。軍服務が終わった研修医や女性専攻医は一般医として勤務できるが、離脱研修医の急増で給与水準が下がっている。
専門医資格を得た後、専攻医指導病院に残って勤務するフェローの給与は700万ウォン、中小病院で週5日勤務する契約医師は1200万ウォンから2000万ウォンが一般的だが、離脱研修医は300〜400万ウォンでも仕事がないという。
患者と病院、離脱研修医のいずれも良い結果を生まないなか、この状況を歓迎する医療機関もある。美容整形外科と療養型病院だ。ソウルのある美容整形外科が月400万ウォンで求人を出したところ応募が殺到したという。手術は任せられないが看護師並みの給与で医師を採用できるとして「営業拡大」を図る動きもある。
療養型病院は「専門医資格がなければ昼に勤務できる病院が少ないため、夜間の当直を一般医に任せているが、確保が難しい状況だった」といい、「離脱研修医は恵みのようだ」と歓迎する。一般医は専門医と比べて勤務先が限られるうえ、給与水準も低いが、離脱研修医に対する目は冷ややかで、政府も手を差し伸べる考えはないようだ。