最新記事
韓国

大型連休控え医療混乱ピークの韓国 病院・研修医・患者が苦境のなか、漁夫の利を得たのは?

2024年9月12日(木)12時30分
佐々木和義
ソウルの新村(シンチョン)にあるセブランス病院

ソウルの新村(シンチョン)にある延世大学医科大学の付属病院セブランス病院では研修医600人の実に99%が退職届を提出した。 撮影:佐々木和義

<年に1度の大型連休を控え韓国の医療は危機的状況に陥っているが──>

医療混乱が続いている韓国の尹錫悦大統領が、秋夕(チュソク)連休を控えた9月2日、医療対策に万全を期すよう指示を出した。秋夕は旧歴8月15日とその前後に祖先を祀り、墓参りなどをする韓国国民にとってもっとも重要な祝日で、今年は9月14日から18日まで5連休となっている。この時期は多くの企業が休業となり、病院でも外来は休診となることから救命救急センターを訪れる患者が増えると予想されている。

今年2月6日、韓国政府が医師不足対策として大学医学部の定員を現行の3058人から5058人に増やす方針を発表すると、医師会は猛反発、ストライキを実施し、研修医が集団で辞職した。約1万3000人の研修医が全国221の病院で指導教授のもと医療に従事していたが、4分の3に相当する9900人が退職届を提出し、最終的に7600人余が医療現場を離れた。

研修医は専攻医指導病院で1年間のインターンと3〜4年のレジデントを経て専門医資格を取得する。労働6割、研修4割といわれている研修医は指導病院にとって欠かせない人材だ。

ビッグ5と呼ばれるソウルの5大病院をみるとソウル大学病院は全医師の46.2%を研修医が占めており、セブランス病院も40.2パーセント、サムスンソウル病院は38.0パーセント、ソウル峨山(アサン)病院は34.5パーセント、ソウル聖母病院は33.8パーセントが研修医だ。彼らの大量離脱でそれまで研修医が補助を担っていた手術や入院患者の受け入れに支障をきたすようになった。

研修医不足で、緊急患者がたらい回しに

医師不足に陥った大規模病院は新患の受け入れを制限。すると中小規模の病院へと患者が殺到、自力で病院を探すことを断念した軽症患者が救急車を呼ぶなど混乱が広がった。

医療混乱が広まって半年近く経った8月4日、ソウル近郊の京畿道高陽市で熱性のけいれんを起こした2歳4カ月の女児が11の病院から「治療できる医師がいない」として受け入れを拒否され、救急通報から1時間5分後に40キロ離れた仁川市の仁荷大学病院に搬送されたが、1カ月経った9月4日現在、意識が回復していないという。8月9日に地下鉄1号線九老駅で怪我を負った作業員は16時間に亘って病院のたらい回しにあっている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米潜水艦がイラン軍艦を魚雷で撃沈、87人死亡 スリ

ワールド

イラン、米CIAに停戦に向けた対話の用意示唆=報道

ビジネス

ミランFRB理事、年内利下げ継続を主張 「イラン攻

ビジネス

金利据え置きを支持、インフレ見通しはなお強め=米ク
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 7
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 8
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中