最新記事
韓国

ポストソウルは実現するか? 21世紀初の首都機能移転を目指す世宗市の今

2024年9月28日(土)19時00分
佐々木和義

念願の地方裁判所の設置へ

世宗市の錦江歩行橋と住宅団地

世宗市の錦江歩行橋と住宅団地(世宗市提供)

ただ、最近になって明るいニュースも出てきている。一つは地方裁判所の設置が国会で可決されたことだ。実は世宗には裁判所、検察庁はなく、同じ忠清道(チュンドンド)の大田(テジョン)の裁判所、検察庁が管轄している。それがこの9月26日、2031年に世宗地方裁判所を設置するという法案が国会で可決されたのだ。今後は検察庁法の改正手続きを経て世宗地方検察庁の設置も2031年を目標に行われる見通しだ。行政首都を目指してきた世宗市にとって、行政を司る世宗政府庁舎、立法を司る国会世宗議事堂に続いて、司法を司る裁判所の設置が法制化されたという点で大きな意味をもつ。

そして尹大統領が公約にあげていた国会の移転もゆっくりとだが進みつつある。9月12日に国会に世宗議事堂建設委員会が設置され、9月27日には禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長とともに世宗市で会議を開催した。禹議長は「首都圏への超集中、地域は消滅という問題は韓国の最も大きな社会問題になっている」と語り、議事堂建設は自身の任期が終わる20265月までに構想を完成させ基本設計に入るようにすると挨拶した。ここで重要なのは何かにつけ対立し国会運営に問題が起きている与野党が、国会の移転についてはともに賛成しているという点だろう。国会の世宗議事堂は、早ければ2028年、遅くても2030年中に竣工する予定だ。

シェアキャンパスの開校で

また、9月25日にはソウル大学を含めた3大学が入居する世宗シェアキャンパスが開校した。来春になると忠南大学が加わり1000人の学生がここで学ぶようになり、さらに2028までには高麗大学などが加わり全体で3000人規模のキャンパスになるという。開校式には韓悳洙(ハン・ドクス)首相もかけつけ、「人口危機と地方消滅が社会問題になる今、国内各地域の均衡発展の象徴としてスタートした世宗市(建設)の意味はさらに大きい。政府は首都圏集中を緩和し、果敢な規制革新と企業の地方移転、投資促進などで地方時代を開いていくために努力する。機会発展特区と教育特区などの政策で実質的な恩恵が受けられるよう努める」と挨拶。少子化問題による地方消滅と大学の危機が叫ばれるなか、このシェアキャンパスの意義を強調したという。

このようにさまざまな課題を抱える世宗市だが、21世紀に首都機能を移転する目的で造られた計画都市は先行例がなく、山積する課題は自ら解決していくほかはない。草創期を終え次の段階に進もうとしている新都市の今後は、尹大統領や国会だけでなく、東京大学大学院で政治学を修めたチェ・ミンホ市長の肩にもかかっているといえるだろう。

日本でも首都機能移転についてはさまざまな検討がなされ、1992年には「国会等の移転に関する法律」が成立して候補地の選定まで進んだものの、現在は消費者庁が一部業務を徳島に移転したり、文化財の多くが集中する京都に文化庁が移転したくらいで、一時期のような盛り上がりはなくなってしまった。とはいえ、将来予想される首都直下型地震などを考えると首都機能移転は検討すべき課題である。その際に韓国・世宗特別自治市は大きなロールモデルになるだろう。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午前のドルは158円後半へ上昇、原油価格急騰で全面

ワールド

中国軍は党に忠誠尽くし、汚職を根絶しなければならな

ビジネス

ECBの政策は「良好」、イラン戦争には警戒=シュナ

ワールド

焦点:中東産原油に依存するアジア、代替の選択肢は限
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ルートとは?...スクワットの真実
  • 2
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗雲...専門家「イランの反撃はこれから」「報道と実態にズレ」
  • 3
    大江千里が語るコロナ後のニューヨーク、生と死がリアルな街で考える60代後半の生き方
  • 4
    「溶けた金属のよう...」 ヨセミテ国立公園で「激レ…
  • 5
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 6
    なぜ脳は、日本的「美」に反応する? 欧米の美とは異…
  • 7
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 8
    日本の保護者は自分と同じ「大卒」の教員に敬意を示…
  • 9
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 4
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 5
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 6
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 7
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 10
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中