ポストソウルは実現するか? 21世紀初の首都機能移転を目指す世宗市の今
念願の地方裁判所の設置へ
ただ、最近になって明るいニュースも出てきている。一つは地方裁判所の設置が国会で可決されたことだ。実は世宗には裁判所、検察庁はなく、同じ忠清道(チュンドンド)の大田(テジョン)の裁判所、検察庁が管轄している。それがこの9月26日、2031年に世宗地方裁判所を設置するという法案が国会で可決されたのだ。今後は検察庁法の改正手続きを経て世宗地方検察庁の設置も2031年を目標に行われる見通しだ。行政首都を目指してきた世宗市にとって、行政を司る世宗政府庁舎、立法を司る国会世宗議事堂に続いて、司法を司る裁判所の設置が法制化されたという点で大きな意味をもつ。
そして尹大統領が公約にあげていた国会の移転もゆっくりとだが進みつつある。9月12日に国会に世宗議事堂建設委員会が設置され、9月27日には禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長とともに世宗市で会議を開催した。禹議長は「首都圏への超集中、地域は消滅という問題は韓国の最も大きな社会問題になっている」と語り、議事堂建設は自身の任期が終わる20265月までに構想を完成させ基本設計に入るようにすると挨拶した。ここで重要なのは何かにつけ対立し国会運営に問題が起きている与野党が、国会の移転についてはともに賛成しているという点だろう。国会の世宗議事堂は、早ければ2028年、遅くても2030年中に竣工する予定だ。
シェアキャンパスの開校で
また、9月25日にはソウル大学を含めた3大学が入居する世宗シェアキャンパスが開校した。来春になると忠南大学が加わり1000人の学生がここで学ぶようになり、さらに2028までには高麗大学などが加わり全体で3000人規模のキャンパスになるという。開校式には韓悳洙(ハン・ドクス)首相もかけつけ、「人口危機と地方消滅が社会問題になる今、国内各地域の均衡発展の象徴としてスタートした世宗市(建設)の意味はさらに大きい。政府は首都圏集中を緩和し、果敢な規制革新と企業の地方移転、投資促進などで地方時代を開いていくために努力する。機会発展特区と教育特区などの政策で実質的な恩恵が受けられるよう努める」と挨拶。少子化問題による地方消滅と大学の危機が叫ばれるなか、このシェアキャンパスの意義を強調したという。
このようにさまざまな課題を抱える世宗市だが、21世紀に首都機能を移転する目的で造られた計画都市は先行例がなく、山積する課題は自ら解決していくほかはない。草創期を終え次の段階に進もうとしている新都市の今後は、尹大統領や国会だけでなく、東京大学大学院で政治学を修めたチェ・ミンホ市長の肩にもかかっているといえるだろう。
日本でも首都機能移転についてはさまざまな検討がなされ、1992年には「国会等の移転に関する法律」が成立して候補地の選定まで進んだものの、現在は消費者庁が一部業務を徳島に移転したり、文化財の多くが集中する京都に文化庁が移転したくらいで、一時期のような盛り上がりはなくなってしまった。とはいえ、将来予想される首都直下型地震などを考えると首都機能移転は検討すべき課題である。その際に韓国・世宗特別自治市は大きなロールモデルになるだろう。