バングラデシュの止まらない学生デモ
Speaking Against Power
首都ダッカで公務員の特別採用枠に抗議する大学生たち(7月4日) HABIBUR RAHMANーABACAーREUTERS
<独立戦争の兵士の子孫に公務員の特別枠、不公平への抗議が与党の強権支配を揺るがす日>
バングラデシュで数万人規模の学生デモが続いている。表向き、抗議の対象は1971年のパキスタンからの独立戦争を戦った兵士の子孫に割り当られた公務員の採用枠だ。
警察や与党アワミ連盟の活動家らからの脅しにもかかわらず、デモは続いている。シェイク・ハシナ・ワゼド首相はデモに対して厳しい態度を崩さず、学生たちの要求には耳を貸そうともしない。
アワミ連盟は独立戦争を主導した政党だ。学生側は、特別枠制度は差別的で、与党寄りの人々の採用につながっていると主張、縁故ではなく実力主義での採用を求めている。
だが、実際には抗議の対象は特別採用枠だけにとどまらない。アワミ連盟は、自分たちは国民に選ばれた代表であり、国を統治する道義的権威を持つと主張している。だがアワミ連盟が政権の座にいられるのは、選挙の実態が自由でも公平でもないからだ。
2009年から続くハシナ政権下でバングラデシュは権威主義国家への道を突き進んでおり、政治指導者への抗議活動を行うのは容易ではない。そこで特別枠という個別の問題が、国民の幅広い不満のはけ口として機能している。
強権主義的な指導者が、国民から情報へのアクセスや不満を表明する場を奪い、反対派を黙らせようとするなかで、特別枠の問題は今や、一種の「民主的ブリコラージュ」として機能しているのだ。
ブリコラージュはもともと、あり合わせのものから何か役に立つものをつくり上げることを指す言葉だ。そして民主的ブリコラージュとは、さまざまな個別のテーマを、それぞれのテーマよりも幅広い政治的、民主的な主張を行う機会として活用することを言う。
リーダーのいないデモ
デモを鎮圧しようとする当局にとって厄介なことに、この抗議運動には頂点に立つリーダーが存在しない。バングラデシュの消息筋によれば、学生たちはメッセージアプリを使って連携しているという。中央から指令や情報が流れるのではなく、学生たちは小さなグループに分かれ、メッセージはグループからグループへとリレーされる。こうすることで、当局の監視を逃れつつ、連絡を取り合うことができるのだ。
一方でバングラデシュではここ数カ月の間に、公務員による深刻な腐敗や違法な富の蓄積のニュースが繰り返し流れた。不正に手を染めたとされるなかには、治安部隊や情報機関の大物も含まれる。