最新記事
海外旅行

未来の海を航く...エコでサステナブルなグリーン・クルーズ体験

Green Cruises: Sustainable Adventures for Eco-Conscious Travelers

2024年7月11日(木)18時00分
アイリーン・ファルケンバーグハル
(写真はイメージです) Peter Hansen-Unsplash

(写真はイメージです) Peter Hansen-Unsplash

<伝統的なクルーズのイメージを覆し、エコでサステナブルな旅が注目されている>

クルーズは伝統的に、最も持続可能な旅の仕方とは言い難かった。何千人もの乗客を乗せた船は、何百万ガロンものガソリンを燃焼しながらあらゆる目的地へと航行する。果てしないディナーブッフェは食品やごみの廃棄物を何万トンも発生させる。それが海に投棄されて汚染を引き起こし、海洋生物の命を脅かすこともある。その大きさで港へと航行するだけでも自然を大きくかき乱す。

しかし新しい世代のクルーズ船はその常識を覆す。楽しさや冒険とともに持続可能性に重点を置き、活気あふれる目的地に向かって環境に優しい旅を実現する。つまり、地元の職人と連携し、使い捨てプラスチックを排除し、カーボンフットプリントを最小限に抑え、環境に優しいツアーに力を入れ、野生生物の保全と保護に努める。

海洋生物の保護:エクアドル・ガラパゴス諸島

セレブリティ・クルーズの客船セレブリティ・フローラでガラパゴス諸島をめぐる太平洋クルーズには未来が見える。乗客定員100人のこの種のクルーズ船としては初めて、ガラパゴス諸島の航行のために特別に設計された。海洋生物を守るため、天然素材を使用し、錨を降ろさなくても船の位置を安定させることができる。太陽光発電で電力を補い、チョコレートや浴室の備品は地元エクアドルから調達する。

代替電力:ケベック・ベーコモー

環境に優しい未来の電力ソリューションを目指すエクスプローラ・ジャーニーズのクルーズ船を降り、世界最大級の水力発電中空ジョイント重力ダムの内部に足を踏み入れる。このダムは地球の自然エネルギーを活用してカナダの電力ニーズをまかなう。マニック2貯水池には440トンの発電装置と、世界で初めて敷設された73万5000ボルト送電線がある。乗客はこのダムをめぐる2時間半のツアーに参加できる。マニクアガン貯水池を眺めながらシーカヤックでセントローレンス川を探索するツアーもある。

カーボンカッター:南極

MSロアールアムンセンの乗客は、フッティルーテン・エクスペディションのハイブリッド動力船で雪と氷とペンギンの大地を目指す。車と同じように、同船のハイブリッドテクノロジーは燃料消費を削減する設計を採用し、二酸化炭素の排出を20%削減できる。同船は、南極の状況の変化を利用した柔軟な旅程で氷の風景を楽しむことを乗客に勧めている。

海洋の生物多様性:フランスのブレストからアイスランドのレイキャビクへ

ポナンのユニークなクルーズは、初のハイブリッド電力極地探検船ル・コマンダン・シャルコーに乗船し、フランスからアイスランドへ5日間の航海を楽しめる。船上では環境スペシャリストの講演やディスカッションを通じ、極地について学ぶことができる。

帆船:フランス・カンヌからバルバドス・ブリッジタウンへ

スター・クリッパーズの客船ロイヤル・クリッパーは42枚の帆で風をとらえ、二酸化炭素を排出せずに大西洋を横断する。伝統を受け継いだデザインに惑わされてはいけない。この豪華客船は遊泳プール完備で、数週間の航海中にウォータースポーツが楽しめる。風力で動力をまかなえない部分は、低硫黄燃料を利用する。

沿岸クルーズ:ノルウェー・フィヨルド

ハヴィラ・ヴォヤージュのクルーズ船に乗船してノルウェー沿岸を北上あるいは南下する乗客は、持続可能な旅を体感できる。航海は最長で12日、ベルゲンからキルケネスまでを往復して34の港に寄港する。搭載の大型バッテリーパックは二酸化炭素を排出せずに4時間の航行ができ、船の移動中に水力発電で充電できる。

女性活用:ヨルダン・アンマン

ユニワールド・リバークルーズの「栄光のエジプトとナイル川」コースには、イラク・アルアミール女性協同組合での1日体験や、陸上で3泊するプロジェクト立案支援が盛り込まれている。同センターはワディシール村のヨルダン人女性150人の経済的自立、生活水準の向上、同地域の遺産保全を目指している。船上では紙のメニューや地図の代わりにQRコードを使い、エネルギー使用を抑えるため窓にUVフォイルを貼るなど、さまざまな形で持続可能性を追求している。

低フットプリントアジア:ドバイからシンガポールへ

ヴァージン・ヴォヤージュの客船は二酸化炭素排出の実質ゼロを目指している。目的地でも気候に重点を置く。16泊の航海はドバイを出発してムンバイ、ゴア、コロンボ、プーケット、クアラルンプールを経由し、シンガポールに到着。ツアーは島内サイクリングやマングローブの森を抜けるカヤック体験、地元の家庭での料理教室など、低カーボンフットプリントのアクティビティが用意されている。

文化交流:横浜

3カ月で世界を1周するピースボートのパシフィック・ワールドでは、国連の「持続可能な開発目標」を追求しながら、船内と船外で文化交流を深められる。船内では気候変動ワークショップ、船外では植樹や海岸の清掃に参加できる。世界一持続可能なクルーズ船をうたう新造船のエコシップは、ソーラーパネルを装着した折りたたみ式マストを備え、垂直農場もある。

風力船:タヒチ島パペーテ

風力ヨットで何日もかけてタヒチをめぐるウィンドスターのクルーズは、南太平洋の自然に囲まれた光景がすぐそこにある。待っているのは最高のスノーケリングが堪能できる澄み切った海、手つかずのビーチやジャングル。星空の下、炎のショーが楽しめるビーチでのプライベートディナーや、ポリネシア文化に浸りきる特別な体験も予約できる。

(翻訳:鈴木聖子)

ニューズウィーク日本版 大森元貴「言葉の力」
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月15日号(7月8日発売)は「大森元貴『言葉の力』」特集。[ロングインタビュー]時代を映すアーティスト・大森元貴/[特別寄稿]羽生結弦がつづる「私はこの歌に救われた」


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

英生産者物価、従来想定より大幅上昇か 統計局が数字

ワールド

トランプ氏、カナダに35%関税 他の大半の国は「一

ワールド

対ロ軍事支援行った企業、ウクライナ復興から排除すべ

ワールド

米新学期商戦、今年の支出は減少か 関税などで予算圧
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 6
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 9
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中