最新記事
アメリカ

クリップスとブラッズ、白人至上主義、ヒスパニック系...日本人が知らないギャング犯罪史

2024年7月4日(木)18時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
サウス・セントラル・ロサンゼルスにある落書き

サウス・セントラル・ロサンゼルスにある落書き。「ブラッズ」「クリップス」の名が書かれている Joseph Sohm-shutterstock

<その第2期は、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやマルコムXといった著名黒人指導者の暗殺から始まった。20世紀初頭から始まる、ロサンゼルスのストリート・ギャングによる犯罪の歴史を紐解く(その2)>

ロサンゼルスのストリート・ギャングの活動は、1960年代の終わりに起こった黒人指導者たちの暗殺によって活動の転換期を迎えた。人種や民族など出自の違いによる分断がベースになる一方で、出自を問わないかたちも生まれた。
『世界は「見えない境界線」でできている』
分断のモザイク化が進み、麻薬、武器と人身の売買、恐喝、殺人など凶悪化していくギャングたち。「見えない境界線」はアメリカだけでなく、近隣諸国へと勢力を拡大していく。

ほとんど日本では知られていない、ディープなストリート・ギャング犯罪の歴史。『世界は「見えない境界線」でできている』(マキシム・サムソン著、かんき出版)から、「ロサンゼルスのストリート・ギャング」の項を抜粋し、3回に分けて紹介する。

本記事は第2回。

※第1回:観光客向け「ギャングツアー」まであるロサンゼルス...地図に載らない危険な境界線はどこか より続く

◇ ◇ ◇

ギャングたちも吸収合併を経て勢力拡大をはかった

USオーガニゼーションとブラックパンサー党の深刻な弱体化が進む一方、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアやマルコムXといった全国的な影響力を持つ黒人指導者が1960年代の終わりに暗殺されたことで、権威と抵抗の新しいシステムが必要になった。

こうして、黒人ストリート・ギャングの第2期が始まった。なかでも全米に名を馳せたギャングは、クリップスとブラッズだった。クリップスの起源については諸説あるが、複数の情報源によると、サウス・セントラル・ロサンゼルスでライバル関係にあったギャングのメンバーで、まだ10代だったレイモンド・ワシントンとスタンリー・「トゥッキー」・ウィリアムズが創設したという。

この2人は、もっと名の知れた敵と対決し、地元を事実上支配しようと考えた。クリップスの好戦性に怒った小規模のギャングは、ただちにブラッズを結成して対抗した。多くの若者――特に貧しく、産業が空洞化した都心部の男性にすれば、こうしたギャングは、地位や仲間だけでなく、それ以上に大切な金を得るための一番わかりやすい道筋だった(特に1980年代以降、クラック・コカイン市場で大儲けできた)。

どちらのギャングも麻薬取引を行うことで、サウス・セントラル・ロサンゼルスの従来の境界をはるかに越えて勢力を拡大した。その過程で、何千もの新しいメンバーをスカウトし、数多くの小規模ストリート・ギャングを吸収して、米国の主要都市だけでなく、カナダのトロントやモントリオールにまで途方もない苦痛を持ちこんだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

商船三井の今期、純利益を500億円上方修正 市場予

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高の流れを好感 徐々に模

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1

ワールド

米首都の空中衝突、旅客機のブラックボックス回収 6
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中