能登半島地震から半年、メディアが伝えない被災者たちの悲痛な本音と非情な現実
REFLECTING THE FUTURE
実際、筆者が訪れたある仮設住宅では、子育て中の中年女性から「コミュニティーって、何?」と憤る声を聞いた。避難所で生活しているときから高齢者はまるで「お客様のように」振る舞い、高校生を含めた若者たちに働かせ、陰では文句や悪口ばかり言っている。そのくせ、子供たちからは体育館やグラウンドなどの居場所を取り上げたままでは、「そりゃ若い子はいなくなるわな」。
彼女は声を震わせながらそう言った。「地震よりも怖いのは、人だった。人の汚らしさばかり見てきて、時間がたつほど余計に苦しくなってきた」。テレビがこの地の現状について表面的な報道をしているのを見るたび「腹が立っている」そうだ。
奥能登に日本の未来を見る
現在の能登の状況は、決して「被災地」だから起きていることではない。過疎高齢化が進む奥能登は、全国各地の未来を先取りしているにすぎない。今年4月24日、民間の有識者グループ「人口戦略会議」は、全体の4割に当たる全国744の自治体が「最終的には消滅する可能性がある」とする分析を公表した。
2050年までの30年間で20~30代の若年女性人口が半数以下になる自治体を「消滅可能性自治体」とするものだが、この推計によれば今回特に被害が甚大だった能登の6市町(輪島市、珠洲市、七尾市、能登町、穴水町、志賀町)は全て消滅可能性自治体とされる。そして、こうした自治体はほかに全国に738もある。
4月9日には、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政制度分科会の会見で、分科会で能登半島のまちづくりが議題に上がり、「(人口減少が一挙に顕在化したなかで)コンパクト化・集約化は、住民の意向も踏まえながらやっていくべきではないか」との意見があったことが説明された。
震災直後には、「財政難の折に、消滅していく集落のために莫大な国民の税金を投与すべきか否か」という声もネットを駆け巡っていた。
金沢大学の谷内江は「コンパクト化・集約化」に一定の理解を示しつつ、「何かおかしいなという違和感がずっとあるんです。その違和感というのは、集落や市町の在り方をどう捉えるかについて。単に税金を使ってインフラをつくってもらうということではなく、そこに人のなりわいがあるということの建設的な意味がきっとあるのではないか」と語る。
今回の取材では、被災した方から「これからどうしたらいいですか」と聞かれることがたびたびあった。能登だけにこの問いを押し付けることはできない。
谷内江は、石川県の「創造的復興プラン」に付けられた副題を指した。「能登が示す、ふるさとの未来~ Noto, the future of country」。「ふるさと」とは日本のこと。「能登は日本の未来を映し出す」という意味である。
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