最新記事
地球温暖化

地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に関与するさまを可視化したNASAの衝撃映像

'Tremendous' NASA Video Shows CO2 Spewing From US Into Earth's Atmosphere

2024年7月25日(木)17時51分
ジェス・トムソン
アメリカから立ち上るCO2、NASA映像

地球上から立ち上るCO2を可視化したNASA動画より NASA'S GODDARD SPACE FLIGHT CENTER/SCIENTIFIC VISUALIZATION STUDIO/ KATIE JEPSON

<世界を覆う猛暑の元凶の、禍々しい「生態」を超高解像度で再現>

NASAの研究所が大気中の二酸化炭素(CO2)の動きを示す衝撃的な映像を公開した。

【動画】CO2の発生源と、それが大気に混じって気象に関与する様子(NASA映像)

大気中のCO2の流れを可視化したこの映像では、アメリカの主要都市から排出されたCO2が上空の気流に乗って渦巻き、巨大な渦となって広がっていく。

この映像は2020年1〜3月のCO2パターンを示したもの。人為活動による地球環境の変化を予測するゴダード地球観測システム(GEOS)のモデルを使って作成された。地球観測衛星テラに搭載された分光放射計や、気象衛星スオミNPPに搭載されたマルチチャンネルイメージャ放射計など、人工衛星に搭載された観測機器のデータと地上の観測データをもとに、スーパーコンピューターで大気の状態をシミュレーションしたものだ。

「政策立案者、科学者として、私たちにはCO2の排出源と排出されたCO2が地球環境にどう作用するかを明らかにする責務がある」と、NASAのゴダード宇宙飛行センター(メリーランド州グリーンベルト)の気候科学者、レズリー・オットは声明で述べている。「この映像で、(CO2の)あらゆる動きと、さまざまな気象パターンがどう関連し合うかを目の当たりにできる」

パルス点滅する噴流

化石燃料の使用、森林伐採、産業活動などの人間の活動に伴い、大気のCO2濃度は大幅に上昇してきた。産業革命以前、CO2濃度は約280ppmだったが、現在は400ppmを上回っている。米環境保護局の報告によれば、アメリカだけでも2022年のCO2排出量は63億4300万トンに上った。

映像を見ると、中国、アメリカ、南アジア各地の都市や発電所など、化石燃料が燃やされる主要な場所から大量のCO2が上空に立ち上っていることが分かる。アフリカと南米では、農地や放牧地、鉱山開発のための伐採や野焼きによる大規模な森林火災がCO2の主要な排出源となっている。CO2のプルーム(噴流)は日中に増加し、夜間には減少するため、時間の経過に伴いパルス点滅しているように見える。

植物は日中には光合成のために大気中のCO2を取り込むが、夜間には呼吸のためにCO2を排出する。この映像を見ると、人為活動によるCO2排出の増減のほうが、植物の作用より圧倒的に大きいことが分かる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中立金利は推計に幅、政策金利の到達点に「若干の不確

ビジネス

日銀の国債買い入れ前提にせず財政政策運営=片山財務

ワールド

米下院補選で共和との差縮小、中間選挙へ勢いづく民主

ビジネス

米ロッキード、アラバマ州に極超音速兵器施設を新設
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    トランプ王国テネシーに異変!? 下院補選で共和党が…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中