最新記事
地球温暖化

地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に関与するさまを可視化したNASAの衝撃映像

'Tremendous' NASA Video Shows CO2 Spewing From US Into Earth's Atmosphere

2024年7月25日(木)17時51分
ジェス・トムソン

「CO2のプルーム構造と、解像度が低いシミュレーションでは見ることのできなかった現象の可視化を目指した」と、オットは述べている。「上空にCO2プルームが長時間とどまること、気象と関連した大気循環とCO2プルームとの相互作用を見ることができるだけでも画期的な成果と言える」

この映像では、CO2プルームは一部の地域に集中していて、他の地域には存在しないように見えるが、実際にはCO2はあらゆる場所で排出されている。特に大量に排出されている地域の上空に高濃度のプルームが見られるだけだ。

「(プルームが)より疎らな地域では、CO2が排出されていないという印象を持たれては困る」と、ゴダード宇宙飛行センターの上級可視化デザイナーであるA・J・クリステンセンは声明で述べている。「ただ、データから高濃度の地域があるという興味深い特徴が浮かび上がったので、それを強調しようと考えたのだ。ニューヨークと北京の上空の濃度が極端に高いことを示したかった」

この映像では、人為活動によるCO2排出のスケールを実感できる。ひいては気候変動がどの程度、人間の活動に起因する現象なのかも分かる。

より正確な予測のために

CO2、水蒸気、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)などの温室効果ガスは、太陽が放射する赤外線の一部を吸収し、大気中に再放射する。それにより大気中に熱がこもり、地球温暖化が引き起こされる。気温の上昇は気象パターンに影響を及ぼし、ハリケーンや干ばつ、熱波、豪雨などの異常気象を激甚化・頻発化させ、極地の氷や氷河の融解を引き起こし、海面を上昇させる。

世界気象機関(WMO)の最新の報告書によれば、2023年には世界の平均気温は観測史上の最高を記録したという。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は過去の報告書で、人間の活動が温暖化を引き起こしていることは、もはや「疑う余地がない」と断定した。

「一連の極めて複雑なモデルをつなぎ合わせ、さまざまな衛星データを活用することで」、大気中のCO2濃度に関わる全ての現象の相互作用をダイナミックに捉え、「巨大なパズルのピースを埋めることができる」と、オットは述べている。大気中の温室効果ガスのレベルや動きを今、「正確に把握することで、今後数十年、いや数百年の状態をより正確に予測できるモデルを構築できる」。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中