最新記事
医療

「病院で待つ必要ナシ!」 自宅にいながら医療サービスを受けられる時代が来た

THE TELEHEALTH REVOLUTION

2024年5月24日(金)13時35分
ジェイコブ・クピエツキー

ディスプレイの前で話す医師たち

高画質映像や大容量データの伝送が可能になり、今や多くの医療行為はリモートで行える。遠隔医療の導入は医師の働き方改革にもつながる TOM WERNER/GETTY IMAGES

加えて、医療機関側は患者の容体を遠隔でモニターできる。

手術などの治療後には一定期間、病状が軽快しているか、副反応が出ていないかなど経過観察が必要な場合がある。これを医療機関で行うと、資金とコストがかかる。可能な場合は患者が自宅で療養し、医師が遠隔でモニターする方法を取れば、入院患者を減らせる上、容体の急変に医師が即座に気付いて対応できる。

高齢化の進展で普及が急務に

疾患によっては対面での診察や検査が必要になるが、医師が日常的に行っている医療行為の多くはパソコンやスマートフォンの画面越しに遠隔で行うことが可能だ。医師は手が空いたときにいつでも患者と連絡を取って診察を行い、場合によっては薬を処方するなど治療も行える。

スマートウォッチなどウエアラブル機器の進化で人々の健康意識が高まり、自分の体の状態を数値で把握し、かかりつけ医にデータを共有する人が増えた。これにより医師と患者の関係は大幅に改善され、より治療をしやすい早期の段階で医療的介入を行えるようになった。

医療従事者のオーバーワークとそれによる燃え尽き症候群は今や社会問題となっている。遠隔医療、もしくは遠隔医療と対面診療の組み合わせは医師の働き方改革にもつながり、医療の未来を切り開くと言っても過言ではない。だが、そのためには解決すべき課題がいくつかある。

その1つは個人情報の保護。対面診療なら患者の情報が外部に漏れる心配はまずない。だがポータルやサードパーティーのハードとソフトの利用に加え、ネット経由での患者と医師のやりとりが増えれば、データが盗まれ拡散されるリスクは劇的に増える。これは放置できない問題だ。

第2の課題は医療保険の適用である。アメリカの多くの州には既に保険会社に遠隔医療の適用を義務付ける法律があるが、今はまだ対面診療と同等にはカバーされていない。

さらに情報格差の解消も必要だ。遠隔医療の利用にはスマホやウエアラブル機器、ブロードバンド接続などのネット環境が求められる。こうした技術を利用できないために一部の地域や患者が取り残されることがあってはならない。

遠隔医療の普及を加速させたのは新型コロナウイルスのパンデミックだ。公衆衛生上の危機が収まり、人々が以前ほど対面での接触を回避しなくなれば、遠隔医療の導入を急ぐ医療機関は減るかもしれない。

遠隔医療は将来的には確実に普及するだろうが、できるだけ速く普及させる必要があることを忘れてはならない。アメリカでは7100万人超のベビーブーム世代が既に退職したかその年齢に迫りつつある。つまり新たなパンデミックが吹き荒れなくとも、医療ニーズが激増する状況にある、ということだ。

できるだけ早く遠隔医療の課題を解決し、より優れたアプリを開発すること。それによって社会全体が大きな恩恵を受ける。

ニューズウィーク日本版 BTS再始動
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年4月7号(3月31日発売)は「日本企業に迫る サステナビリティ新基準」特集。国際基準の情報開示や多様な認証制度――本当の「持続可能性」が問われる時代へ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:中東緊迫で市場乱高下「AIトレード

ビジネス

米財務省、プライベートクレジット巡り保険規制当局と

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、5万4000円回復 米株

ビジネス

バーレーンのアマゾンクラウド施設に被害、イランの攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 3
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 8
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 10
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中