最新記事
インタビュー

単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日本経済の現実...物価対策、移民政策への考えとは?

COMPLEX CHALLENGES AHEAD

2024年5月4日(土)20時51分
構成:トム・オコナー

台湾有事の脅威

台湾有事の可能性など日本周辺では脅威が高まる CENG SHOU YIーNURPHOTO/GETTY IMAGES

台湾をめぐる問題については、対話を通じて平和的に解決されることを望んでいる。それが今までの、そしてこれからも一貫した日本の立場だ。今回の訪米ではバイデン大統領に、台湾海峡の平和と安定が重要だと強調し、中台間の諸問題については平和的な解決を促していくことを確認し合った。

この点を中国側に、ダイレクトに伝えることが大切だ。先日は初の日米比首脳会談も行った。フィリピンをはじめ、志を同じくする国々と協力し、いま申し上げたような立場を中国側に明確に伝えていきたい。

──近年の停滞で、日本は経済規模でドイツに追い抜かれ、1960年代以降で初めて世界トップ3の座から転落した。これは短期的な問題だろうか。

確かに昨年はドル換算の名目GDPで日本はドイツに追い抜かれた。これが短期的な現象か、長期的な現象かが問題だ。為替レートの変動や、ドイツのほうが日本よりも物価上昇ペースが速いことが、このような状況になった主な理由だと思う。

だが長い目で見ると、日本では過去30年にわたって「コスト削減型」の経済が続き、投資も賃金も減る一方だった。そういう「縮み志向」の経済だったから、このように停滞が長引いている。

それでもようやく明るい兆候が見えつつあり、日本経済の明るい材料が確認されている。このような経済の好循環が持続すれば、来年に向けて日本経済は再び活気を取り戻せる。それは可能だと、私は思う。

その一方、日本では出生率が低下し、高齢化が進んでいる。人口の減少には対処しなければならない。経済への長期的な影響を考えれば重要な問題だ。子ども・子育て支援策を継続的に実施していくことで、子どもを持ちたい若い世代が子どもを生み、子育てをしていける環境づくりをすることも重要だ。

──人口を増加に転じさせるために移民の受け入れを促進することも考えているか。

日本は子ども・子育て支援、デジタル化やその他の政策を通じて人口減少の問題に対処している。それと同時に働き方改革などの措置を通じて、意欲があって元気な高齢者、そして何より、女性が日本の社会と経済の中で積極的な役割を果たせるようなシステムを創出することが極めて重要だ。

だがこれらの取り組みを行っても、まだ労働力不足、人手不足の問題は残る。海外から優れた能力を持つ人材を招き、日本の社会と経済の中で活躍してもらうことを検討しなければならない。今国会では、海外から日本へ働きに来たいと思えるような新制度を作る法律改正を議論している。高い能力を持ち意欲のある労働者を招き、日本社会を支援してもらえるようにしたいと考えている。

だが移民については、日本の社会にはさまざまな見解がある。今も日本社会の一部には、海外からの労働者移住を無期限に続けるという発想に抵抗する向きがある。だから現在は、完全な移民受け入れ構想ではなく、一定の規則を設けた上で、いま説明したような形で外国の人材を日本に迎える方策を考えている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏インフレは当面2%程度、金利は景気次第=ポ

ビジネス

ECB、動向次第で利下げや利上げに踏み切る=オース

ビジネス

ユーロ圏の成長・インフレリスク、依然大きいが均衡=

ビジネス

アングル:日銀、追加利上げへ慎重に時機探る 為替次
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 8
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中