最新記事
ロシア軍

ロシア軍の兵器庫は無尽蔵? 破壊し尽くせない物量の恐怖

How Much Firepower Does Russia Have Left After Two Years of War?

2024年3月25日(月)22時00分
デービッド・ブレナン

こうした損失を埋めているのは、旧ソ連で1970年代に生産された戦車T-62のような古い車両だ。IISSによれば、ロシアでは現在、約1300両の戦車が使用されているという。古い戦車の一部は、静止型射撃台に改造されるほか、爆薬を詰め込んで車両搭載型即席爆発装置(VBIED)として使用されることもある。

失われた戦車の中には、ロシアで最も先進的で戦闘実績も高いT-90主力戦車数十両も含まれている。大々的に宣伝されていた次世代装甲戦闘車両「アルマータ」シリーズのT-14主力戦車の導入は長らく延期されていたが、開発にあたっていた国営の防衛コングロマリット、ロステックはコストの増大を理由に、今年初めに開発を断念した。

IISSの『軍事バランス2024』報告書によれば、ロシアには200両以上のT-90を含むさまざまなタイプの戦車が1750両ほど残っており、最大で4000両が保管されているという。

歴史的にロシアが「戦争の神」として重視している砲兵火力は、今も戦場で重要な役割を果たしている。ウクライナはこれまでの戦闘で1万70門以上を破壊したと主張しているが、
IISSによれば、ロシアはさまざまなタイプの砲を4397門保有している。

ロシア空軍の活躍

空中戦では、ロシアは戦争の初期段階で数的優位を行使することができなかった。ウクライナ空軍は現在も定期的に出撃している。対空兵器の支援を受けて増強し、国土の大半でロシア軍機の進入を防いでいる。

ウクライナは2022年2月以来、あらゆるタイプのロシア軍機347機を撃墜したと主張してする。オープンソースの情報サイト「オリックス」は、97機の撃墜と8機の損壊を確認したという。

それでも、ロシア空軍は東部戦線で極めて重要な戦果をあげており、航空機から投射する滑空爆弾を使ってアウディーイウカのような激戦地でウクライナの陣地を攻撃、破壊している。

ロシアは、ウクライナの都市やインフラ目標に向けて長距離ミサイルを発射するために、今もさまざまな航空機を使っている。開戦前に保有していた2300発の戦略ミサイルも、まだ約900発残っている。

IISSの報告によると、ロシア空軍は爆撃機129機、戦闘機188機、戦闘機/対地攻撃機433機、対地攻撃専用機257機を含む固定翼機約1169機を保有しており、さらに208機が海軍航空部隊に配属されている。また、空軍は約340機の攻撃ヘリコプターを保有している、と軍事バランス報告書は述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、対中関税を大幅引き上げ EVや半導

ワールド

再送-バイデン政権の対中関税引き上げ不十分、拡大す

ワールド

ジョージア議会、「スパイ法案」採択 大統領拒否権も

ビジネス

米ホーム・デポ、売上高が予想以上に減少 高額商品が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 10

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中