「ノージャパン」はどこへ......韓国ソウルの街角に日本語看板が急増! その背景は?
乙支路3街で19年4月から居酒屋「由佳の家」を経営する岩嵜さんは日本語表記に肯定的だ。岩嵜さんによると、昨今のハイボール人気で日本式居酒屋が増えてきたという。日本式居酒屋が軒を並べ、日本語表記が話題になれば日本料理を求める人が集まってきて地域の活性化にも繋がるだろうと話す。
伝統と革新、ソウルの日本式ビジネス
日本旅行を機に本格的な日本の味を求める韓国人が増えているが、新たに誕生した日本語看板のオーナーは韓国人で、域内にある日本人の店は「由佳の家」が唯一だ。味の違いを知った人が利用する期待もある。
乙支路3街は韓国有数の印刷団地として知られている。かくいう筆者もソウルで創業した12年から事務所を構えていた場所で、当時、日本式料理を提供する店は、とんかつ店が一軒あるだけで、日本語は日本人観光客を目当てに併記する店が数軒みられる程度だった。
就労人口に対して飲食店が少ないことからいずれの飲食店も活況を呈していたが、韓国の景気後退が始まった17年頃から廃業する工場が増え、その廃工場を転用したカフェや飲食店が若者の間で人気となった。ところがコロナ禍で廃業が加速し、それに伴って飲食店の閉店も相次いだ。週末は若者で溢れるが、平日は人通りがめっきり減った。日本語看板が話題になると人通りが戻る期待があると「由佳の家」の岩嵜さんはいう。
文化交流か模倣か、看板論争の核心
日本語看板に関して賛否両論が渦巻いている。日本語に限らず、さまざまな言語表記で個性を出す店が増えて興味深いと前向きにとられる声や「日本っぽい雰囲気だと知ってわざわざ訪ねてくる利用者がいる」という店員もいる。その一方、日本の統治に言及し、過去を忘れて日本文化をもてはやすかのようだと拒否感を示す声もある。
19年下期から広がった日本製品不買運動と続くコロナ禍の外出規制で多くの日本料理店が苦境に立たされ、閉店した店や商売替えをした日本料理店も少なくない。日本寄り政権の誕生と空前の日本旅行ブーム、ハイボールブームが相まって日本式居酒屋が急増するが、筆者ら日韓ビジネス従事者がノージャパンを忘れることはない。
27年の次期大統領選で反日政権が誕生する可能性はゼロではなく、日本ブームは選挙戦がはじまる26年下期以降、どうなるか予断を許さないと考える。新たに開店した日本式料理店が果たして消費者に受け入れられるのか、さらには何軒が生き残ることができるのか。一過性のブームで終わる可能性は否めない。