最新記事
韓国

「ノージャパン」はどこへ......韓国ソウルの街角に日本語看板が急増! その背景は?

2024年2月13日(火)17時57分
佐々木和義

乙支路3街で19年4月から居酒屋「由佳の家」を経営する岩嵜さんは日本語表記に肯定的だ。岩嵜さんによると、昨今のハイボール人気で日本式居酒屋が増えてきたという。日本式居酒屋が軒を並べ、日本語表記が話題になれば日本料理を求める人が集まってきて地域の活性化にも繋がるだろうと話す。

伝統と革新、ソウルの日本式ビジネス

日本旅行を機に本格的な日本の味を求める韓国人が増えているが、新たに誕生した日本語看板のオーナーは韓国人で、域内にある日本人の店は「由佳の家」が唯一だ。味の違いを知った人が利用する期待もある。

乙支路3街は韓国有数の印刷団地として知られている。かくいう筆者もソウルで創業した12年から事務所を構えていた場所で、当時、日本式料理を提供する店は、とんかつ店が一軒あるだけで、日本語は日本人観光客を目当てに併記する店が数軒みられる程度だった。

就労人口に対して飲食店が少ないことからいずれの飲食店も活況を呈していたが、韓国の景気後退が始まった17年頃から廃業する工場が増え、その廃工場を転用したカフェや飲食店が若者の間で人気となった。ところがコロナ禍で廃業が加速し、それに伴って飲食店の閉店も相次いだ。週末は若者で溢れるが、平日は人通りがめっきり減った。日本語看板が話題になると人通りが戻る期待があると「由佳の家」の岩嵜さんはいう。

 
 

文化交流か模倣か、看板論争の核心

日本語看板に関して賛否両論が渦巻いている。日本語に限らず、さまざまな言語表記で個性を出す店が増えて興味深いと前向きにとられる声や「日本っぽい雰囲気だと知ってわざわざ訪ねてくる利用者がいる」という店員もいる。その一方、日本の統治に言及し、過去を忘れて日本文化をもてはやすかのようだと拒否感を示す声もある。

19年下期から広がった日本製品不買運動と続くコロナ禍の外出規制で多くの日本料理店が苦境に立たされ、閉店した店や商売替えをした日本料理店も少なくない。日本寄り政権の誕生と空前の日本旅行ブーム、ハイボールブームが相まって日本式居酒屋が急増するが、筆者ら日韓ビジネス従事者がノージャパンを忘れることはない。

27年の次期大統領選で反日政権が誕生する可能性はゼロではなく、日本ブームは選挙戦がはじまる26年下期以降、どうなるか予断を許さないと考える。新たに開店した日本式料理店が果たして消費者に受け入れられるのか、さらには何軒が生き残ることができるのか。一過性のブームで終わる可能性は否めない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中