寸前まで検討されていた「アメリカの北朝鮮攻撃」、なぜ攻撃を断念したのか?
The Attack That Wasn’t
核兵器を保有していなくても、北朝鮮は特に困難な標的と見なされていた。アメリカの情報報告書は、北朝鮮が「前方展開部隊の改善と訓練」と、「インパクトの大きい」兵器に重点を置いた「現在の通常戦力と軍事即応態勢の維持」への投資を続けていると強調しており、北朝鮮はそれを米朝枠組み合意後も継続していた。
ブッシュ(息子)政権のドナルド・ラムズフェルド国防長官は、「膨大な兵器の地下配備」を含む北朝鮮の巨大な地下要塞網が、侵攻を極めて困難にすると主張した。
いち早く侵攻すべき国
クリントン政権が北朝鮮の軍事施設への攻撃を検討していた1994年、国防総省は北朝鮮との戦争で米韓両軍の死傷者が54万人を超えると予測した。こうした推計は2000年代までに増加したが、北朝鮮がVX神経ガスなどの非通常兵器を使用する可能性を一貫して無視していた。
対照的に、イラクとリビアは攻撃目標としてはるかに脆弱で、両国とも制裁緩和と引き換えに一方的な武装解除と、軍事施設の詳細な査察を受け入れていた。シリアはより脅威で、イラクよりも多数の化学兵器を保有し、1990年代以降は弾道ミサイルを北朝鮮から購入して大幅に近代化した。2000年代前半までには、イラクが保有していたどのミサイルよりも射程距離が長く、正確なミサイルを配備した。
ウィルカーソンによれば、北朝鮮は圧倒的に差し迫った標的であり、当初はいち早く侵攻すべき対象だったが、その通常戦力がブッシュ政権に攻撃計画の見直しをさせた。つまり、北朝鮮が核実験を実行したり、日本より遠くの標的を攻撃する能力を誇示するずっと前から、強力な抑止力が存在していたということだ。
アメリカ国内では、2018年まで北朝鮮への攻撃を求める声が広くあったように、北朝鮮の軍事力は、アメリカが軍事的選択肢を完全に排除するには十分ではなかった。しかし、「中東のたやすい目標」への攻撃に注意をそらせるには十分だった。
北朝鮮はその間に抑止力を強化し、2006年と2009年に核実験を実施し、2010年代には戦略兵器と通常兵器の近代化を加速させた。核兵器とICBMは開発費が比較的少ないため、通常戦力の負担が徐々に軽減され、2009年頃からは国防費が削減されると同時に、より確実な抑止力を提供するようになった。
しかし、もし北朝鮮の通常戦力が違うものであったら、2000年代半ばには、米国主導のアフガニスタン侵攻後に第2次イラク戦争ではなく、新たな朝鮮戦争が勃発し、世界の地政学に重大な影響を与えていたかもしれない。
From thediplomat.com
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