最新記事
介助犬

自閉症の少年と相棒の介助犬「トパーズ」の絆が灯す希望の光

Boy’s Best Friend

2024年1月26日(金)17時00分
マウラ・ツーリック
自閉症の少年が最高の相棒と出会った

レトリバーのトパーズとチェイスは愛情に満ちた関係を結んでいる ASHLEY CLOUSER

<障害に伴う少年の攻撃行動の激化に戸惑う家族が探った解決策、、、。困難を乗り越えて、介助犬を迎え入れたことで本人と家族の人生が変わり始める>

米ペンシルベニア州西部の町シェロクタに住むクラウザー一家にとって、メスのゴールデンレトリバー、トパーズとの出会いは「人生が変わる体験」だった。

3歳のトパーズは「最愛の相手」である9歳の少年チェイス、母親のアシュリーと父親のジャスティン、5歳の弟コナーと一緒に暮らしている。

チェイスは自閉症とADHD(注意欠陥・多動性障害)で、トパーズはチェイスの手助けをするよう訓練された介助犬だ。

「チェイスのことが大好き。こんなに愛情深い犬は見たことがない」と、アシュリーは本誌に語った。

それまで「ごく普通」だった一家の生活は、新型コロナ対策の封鎖措置が広がった2020年に一変した。

チェイスが「ひどく攻撃的」になり、何をしても落ち着かせることができなくなった。

本人や家族を傷つけないよう体の自由を奪うしかなくなったと、アシュリーは振り返る。

「チェイスにとって、混乱した世界に対処する唯一の方法が攻撃的になることだった。20年6月には実につらい決断をする羽目になり、治療のために精神科に入院させた。

退院後は多少は改善したが、これがわが家の『ニューノーマル』だと気付いて怖かった」

自閉症児支援の「マニュアルはゼロ」で、打つ手がない状態だったという。

助けを求めたフェイスブックで友人から教えられたのが、障害のある児童や退役軍人に補助犬を提供するNPO「4ポーズ・フォー・アビリティー(能力を支える4本の足)」だ。

オハイオ州ジーニアを拠点とする同団体は1998年に設立された。

以来、補助犬計1800頭以上を育成・訓練していると、広報担当者のケイリン・クラークは電子メールで本誌に説明した。

「とにかくチェイスを刺激しないようにする。それが生活の中心になっていた」と、アシュリーは話す。

「何かが起きたらとか、誰かがけがをするのではないかと心配することなく、家族らしく一緒に行動するためには、介助犬を見つけることが重要だった」

トパーズを迎え入れるまでの道のりは「長かった」という。

特に問題だったのが、希望者リストへの登録費用だけで1万7000ドルもの大金が必要だったことだ。だが、家族や地域住民の「素晴らしいネットワーク」や募金活動、地元紙の協力のおかげで目標額を用意できた。

オハイオ州に犬を迎えに行き、共にトレーニングをしてから連れて帰るための費用も必要だった。

全ての準備が整ったのは昨年3月。その2カ月後、一家はチェイスにとっての「ヒーロー」、トパーズに会うために「わくわくしながら」ジーニアへ向かった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マスク氏資産、初の7000億ドル超え 巨額報酬認め

ワールド

米、3カ国高官会談を提案 ゼレンスキー氏「成果あれ

ワールド

ベネズエラ沖で2隻目の石油タンカー拿捕、米が全面封

ワールド

トランプ氏関連資料、司法省サイトから削除か エプス
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中