最新記事
アメリカ政治

米大統領選、トランプは「黒人票」で勝利へ──黒人層が「バイデンはオバマになれない」と失望したワケ

Trump’s Secret Weapon

2024年1月24日(水)12時32分
ケイト・プラマー
トランプ前大統領の黒人支持者たち

2020年選挙の結果を覆そうとした疑いで訴追されたトランプの黒人支持者たち(昨年8月、ワシントンDC) KENT NISHIMURA/GETTY IMAGES

<生活苦でバイデン政権に失望した黒人男性が激戦州で民主党を見捨てれば、前大統領がホワイトハウスに帰って来る>

今年11月の米大統領選挙で、ドナルド・トランプ前大統領は歴代の共和党候補の誰よりも多くの黒人票を獲得する可能性がある。

ブルームバーグが全米規模および激戦州での世論調査結果を精査したところ、共和党の予備選でトップを走るトランプは現時点で、黒人票の14~30%を確保している。ピュー・リサーチセンターによると、前回2020年の大統領選では約8%だったから、驚異的な伸びであり、票数に換算すれば共和党候補として歴代最多となる見込みだ。

米政治専門サイトのポリティコが引用した全米黒人地位向上協会(NAACP)の推定によると、1960年の大統領選挙では約500万のアフリカ系アメリカ人が投票に行き、その32%が共和党候補のリチャード・ニクソンに票を入れていた。なお国勢調査の数字を見ると、当時の黒人は総人口の10.83%を占め、実数では1941万8190人だったが、今は13.6%で4693万6733人だ。

黒人の投票率はどうか。統計会社スタティスタによると、データが入手可能となった最も古い時点である1964年の選挙では58.5%で、前回2020年は58.7%だった。つまり、ほぼ変わっていない。そうであれば、今回のトランプが黒人票の13%以上を獲得すれば、得票率では60年のニクソン以降で最高、実数では史上最多となる。

民主党現職のジョー・バイデンはどうか。ピュー・リサーチセンターによれば、前回20年には黒人票の92%を獲得。これがジョージアやペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシンといった激戦州での勝利につながった。ジョージア州では黒人票の88%を集め、1万1779票の僅差ながらもトランプに競り勝っている。

「黒人の命も大事だ」のような運動も風化した

だが昨年末の時点で、バイデンは黒人の支持をかなり失っていた。ブルームバーグ・ニューズとモーニングコンサルトによる合同世論調査によれば、23年10~12月には激戦7州で黒人有権者の支持率が7ポイントも低下し、61%になっていた。一方、黒人のトランプ支持率は25%前後で安定的に推移している。

仮にもトランプが激戦州でバイデンより多くの黒人票を獲得すれば、彼が大統領に復帰する可能性は高まる(本誌は両陣営にコメントを求めたが回答は得られなかった)。

ペンシルベニア州立大学のメアリー・フランシス・ベリー教授(歴史学)は本誌の取材に対し、背景には経済的な理由があるとした。

「インフレ率は下がったが、今でも黒人男性は食品など生活必需品の価格高止まりに不満を抱いている」とベリーは言う。「中小企業の経営者にも、トランプ政権時代のほうが連邦政府からの融資を受けやすかったという人がいる」。かつての「黒人の命も大事だ」のような運動も風化し、今はその反動もあるという。

ガジェット
仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、モバイルバッテリーがビジネスパーソンに最適な理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中