自衛隊を「災害時の何でも屋」にしてしまっている日本...必要なのは日本版FEMAの創設だ
JAPAN NEEDS ITS OWN FEMA
被害が甚大で自然環境も厳しい現場では自衛隊の活動が不可欠だが、自衛隊頼みの災害対応には限界がある(石川県輪島市のグラウンドで医療用品の運搬を待つ隊員、1月6日) BUDDHIKA WEERASHINGHEーBLOOMBERG/GETTY IMAGES
<日本周辺の安全保障環境が悪化する一方で激甚災害が多発。自衛隊の過重な負担を減らすためにも専門組織が必要だ>
新年早々日本は一連の悲劇に見舞われた。元日に能登半島で起きた最大震度7の地震、そして翌日に羽田空港で起きた航空機の衝突事故だ。
海上保安庁の航空機は24時間で3度目の派遣として、地震の被災地に支援物資を届けるため、首都東京の混雑した国際空港から飛び立とうとしていた。まさにその時、着陸直後の日本航空のジェット旅客機と滑走路上で衝突したのである。
「天災は忘れた頃にやって来る」とは、物理学者で随筆家の寺田寅彦が述べた有名な警句だ。それから90年たった今、多くの日本人がこの言葉の意味を改めてかみしめていることだろう。
日本は自然災害にたたられた国だ。気象庁によると、環太平洋火山帯上に位置する日本列島には世界の活火山のおよそ1割に当たる110余りの活火山があるという。日本の最高峰・富士山もその1つだ。
さらに北海道から沖縄まで日本の都道府県には確認されたものだけで約2000の活断層があり、内閣府によれば、世界で起こるマグニチュード6以上の地震のおよそ2割が日本で起きているそうだ。加えて地球温暖化による気候変動で、超大型台風や線状降水帯による豪雨など「観測史上初」の災害も多発している。
ノウハウが蓄積されにくい
こうした要因が重なると、ごく単純な疑問が浮かぶ。アメリカの連邦緊急事態管理庁(FEMA〔フィーマ〕)のような災害対応の専門機関が日本にはなぜ存在しないのか。FEMAは災害のリスクに事前に備え、被害を最小限に抑えて、いざ災害が起きたときには迅速かつ継続的に対応する。
正月の能登半島の地震では、岸田文雄首相率いる現政権の対応を野党が痛烈に批判した。自衛隊の被災地への派遣が「逐次投入」になったため、救助活動が遅れたというのだ。
災害発生後72時間を経過すると生存率が大幅に下がると言われているが、地震翌日の1月2日に被災地に派遣された自衛隊員は約1000人。その後3日に1000人、4日に2600人が増派された。
主要野党・立憲民主党の泉健太代表は5日、「自衛隊が1000人、2000人、5000人という逐次投入になっているのは遅い」と苦言を呈した。これに対し岸田は会見で「半島という地理的な条件、多くの道路が寸断されるなど困難な状況」があったとして「単に人数だけ比較するのは適当ではない」と述べた。