日本の「分断」を追う10年プロジェクト始動──第1回調査で垣間見えた日米の差異
同性婚、環境問題などで、日米で同様の傾向
では、日米比較に入りたい。まず、世界的にも大きな議論になっている「同性婚」「移民受け入れ」「環境保護」という3点を取り上げる。これらの社会問題では、いずれも、米国ではリベラル層が前向きであり、保守層を大きく上回る「賛成率」となっている。
一方、日本のSMPP調査でも、賛成率を取ると、「リベラル」「中間」「保守」の順に、きれいにグラフが右肩下がりになり、米国と同様の傾向が確認できた。ただし、その「右肩下がり具合」は、米国ほどではない。つまり、保守層とリベラル層の「断層」はみられるものの、米国に比べると、かなりマイルドである(図表7〜9)。
米国では、「民主主義が脅かされている」と感じる人が多い
次に、「政治とナショナリズム」について見てみたい。
まず、「自国はトップレベルか」「自国の歴史を誇りに思うか」の賛成率をみると、日本、米国ともに、保守層のほうが高くなっている(図表10、11)。
続いて、民主主義に関する問いをみてみよう(図表12)。日本において、「自国は民主的に統治されている」とみている人の割合をみると、保守層がリベラル層よりも高い。一方、米国の調査で、「米国の民主主義は現在、脅かされていない」とみる人の割合は、保守、リベラル、無党派とも、ほぼ同じである。
日本ではリベラル層でも、60%以上の人が「民主的に統治されている」とみているのに対して、米国では、党派を問わず、全体的に、「民主主義が脅かされている」と感じている人が非常に多いのが印象的だ。
ただ、日本の設問は「全く民主的でない」を1、「完全に民主的である」を10とした10段階評価で、6〜10と答えた人の合計を、「民主的に統治されている」に賛成している、とみなしたものだ。米側は、「アメリカの民主主義は現在、脅かされていない」と考えている人の割合なので、回答の割合を、単純に比較はできない。
日本側の回答で、8〜10と答えた人(かなり高い程度で民主的だと思っている人)に限れば、リベラル層で32%、中間層で25%、保守層で45%となり、「6〜10」の人の割合に比べて、かなり下がってくる。
また、「(国や政治が)誤った方向に進んでいる」と心配している人は、日本ではリベラル層に多く、米国では保守層に多いという特徴がみられた(図表13)。これは、調査時点で、日本では、自民党政権(保守寄りの政権)、米国では民主党政権(リベラル政権)であるために、このような結果になった面が強いとみられる。