「猫も人間が好き。ただ犬より愛情表現が分かりにくい」最新科学が解き明かす猫の本当の気持ち
THE MIND OF A CAT
人間の赤ん坊にそっくりの声
ではなぜ、猫はペットとしてこれほど好まれるようになったのか。
それは猫が、人間が生来的に持つ親としての愛情に訴えるからだと、米ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)の進化生物学者であるジョナサン・ロソス教授(生物学)は考えている。
その証拠として、ロソスはイギリスの研究チームが09年に行った実験結果を挙げる。
それによると、10匹の猫がさまざまな場面で発した鳴き声を録音して、50人の被験者に聞かせたところ、彼らは猫が食べ物を欲しがっているときの鳴き声と、それ以外のときの鳴き声を区別できたという。
詳しく調べてみると、食べ物が欲しいときの猫の鳴き声は、周波数が220~520ヘルツで、人間の赤ん坊の泣き声と同レベルだった。
「人間は遺伝子的に、赤ん坊の泣き声を聞くとそちらに注意を向けるようにプログラムされている」と、ロソスは解説する(関連記事)。
猫の顔は人間の赤ん坊のように、鼻が小さくて両目とも前方を向いている(これに対して、ほとんどの家畜の目は側面を向いている)。
また、大人の飼い猫は体重が平均4~4.5キロと、やはり生まれたばかりの人間の赤ん坊の体重3400グラムに近い。
もちろん、「私が猫を愛してやまないのは、人間の赤ん坊と似ているからじゃない!」と主張する人は多いだろう。
米ユニティ環境大学(メーン州)のクリスティン・ビターリ助教(動物衛生・行動学)は、猫はマイペースというイメージを抱かれがちだが、一般に思われている以上に人間の愛情を勝ち取るのがうまいと語る。
ビターリは長年、「猫は社会性が乏しく、しつけもできないし、頑固で、冷淡だ」という猫嫌いの人たちのコメントに驚いてきた。彼女自身の経験とは大きく異なるからだ。そしてこの10年ほど、猫は反社会的で犬ほど賢くないという誤解を正すための研究に励んできた。
ビターリはオハイオ州ケントに住んでいた7歳くらいの頃、ほぼ毎朝キッチンの床に座って、ゴールドベリーという名前のアメリカン・ショートヘアと一緒にフレンチトーストの朝食を取っていたという。
どこへ行くにもゴールドベリーは付いてきた。黒毛と灰色の三毛猫メイシーも、いつもビターリを探し、擦り寄り、なでてもらいたがった。
ビターリは14年、米オレゴン州立大学大学院で犬の認知研究で知られるモニーク・ユデル助教の研究室に参加した。
そして、猫が飼い主の傍らで過ごす時間を測定するというシンプルな方法によって、猫は犬よりも社会性が乏しいという誤解を打ち砕くことにした。
「犬と同じく個体差はあるが、猫も極めて社会的に振る舞うことが分かった」