最新記事
南シナ海

【南シナ海】中国に妨害されたフィリピン市民から前線へのクリスマス・プレゼント

China's Pressure Forces US Ally's 'Christmas Convoy' To Head Home

2023年12月14日(木)13時00分
マイカ・マッカートニー

スタンフォード大学のシーライト・プロジェクトのディレクター、レイ・パウエルは、中国海警局の船が輸送船団の進路を横切ったように見える航跡データを引用した。

「クリスマス輸送船団はこのせいで引き返すことに決めたのかもしれない」と、彼は10日、Xに投稿した。


安全でないと判断し、最終的にミッションを中止したのは、船団の母船T/Sカピタン・フェリックス・オカの船長だった、とボランティア参加者は語っている。

だが、船団に属していたM/V Chowee号は、中国の海上部隊から逃れることに成功し、別のルートをたどって11日早朝にラワク島で貨物を引き渡したとANCは報じた。

この船団には、フィリピン社会のあらゆる階層の人々が乗り組んでいた。200人以上の参加者の中には、若者や学生活動家、漁民、ジャーナリスト、さらには神父も含まれていた。帰路につく前には船上でミサが執り行われた。

フィリピンの調査グループFACTS Asiaの国家安全保障アナリスト、ジャスティン・バキサルはこの船団は短期間にもかかわらず、いくつかの成功を収めたと本誌に語った、

彼が具体的成果として挙げたのは、一隻の船がラワクに到着したこと、フィリピン政府が当初の懸念にもかかわらずこの構想を承認したことだ。

中国の無分別な妨害

ミッションを中止するほどの危険を輸送船団のボランティアに感じさせたことで、中国は「戦術的勝利」を達成した、とバキサルは言う。

「だがこうした行動は、中国の無分別で短絡的な思考も示している。中国はクリスマス船団のミッションを阻止することで、フィリピンを公然と侮辱した。フィリピン政府が次の作戦に全力投球することは間違いない」と、彼は述べた。

この時期に海上を巡視する中国船と衝突したのは、この船団だけではない。

12月10日には、紛争海域であるセカンド・トーマス諸島の海上前哨基地に物資を輸送するフィリピン沿岸警備隊も、中国船の妨害を受けた。中国船が放水砲を使用したため、フィリピンの補給船1隻のエンジンが損傷。港まで曳航されるほどの損傷を受けた。

また、中国船とフィリピンの補給船が軽い衝突事故を起こした。

その前日には、別の係争地域であるスカボロー浅瀬付近の海域で、待機している漁民への補給に向かうフィリピン漁業局の船が、放水銃を配備した中国海警局の船とにらみあった。

フィリピンとアメリカは、中国船がフィリピン船の乗組員に対して音波兵器を使用し、一時的に行動できない状態にしたと非難した。アメリカは武力攻撃からフィリピンを守る条約を結んでいる。

11月には、中国の海上民兵の船も135隻の大群で表れた。海上民兵は愛国的な漁民の船の集団で、人民解放軍海軍や中国海警局と共に行動する。中国政府な公式にはその存在を認めていない。

mapsouthching.jpg

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中