最新記事
イエメン

紅海で艦船攻撃、米軍をも脅かすイエメン・フーシ派の対艦弾道ミサイル

U.S. Navy Faces Houthi Anti-Ship Missile Threat 'Superior' to Most States

2023年12月5日(火)18時03分
エリー・クック
ガザ地区のパレスチナ人を支援に行くフーシ派部隊の新兵

ガザ地区のパレスチナ人を支援に行くフーシ派部隊の新兵(12月2日、イエメンの首都サヌア)  REUTERS/Khaled Abdullah

<紅海航行中の商船の攻撃に使われたと見られる対艦弾道ミサイルを持つのは、イランとイランが武器供与しているフーシ派だけ。その備蓄量は世界有数だという>

【動画】貨物船を急襲するフーシ派

 

米海軍は、イエメンを拠点とする武装組織フーシ派と紅海で対峙しているが、イランから支援を受けるフーシ派がどんな武器を持っているのか、正確なところはほとんどわかっていない。とはいえ、はっきりしていることがひとつある----状況さえ整えば、中東に展開する米軍の脅威となりうるだけの対艦ミサイルをためこんでいる、ということだ。

米国は12月3日、「紅海南部の国際水域を航行していた商船3隻」が、イエメンのフーシ派が支配する地域から4回の攻撃を受けたと発表した。米中央軍(CENTCOM)は声明のなかで、一連のミサイルはフーシ派支配地域から発射され、商船のうち2隻が損傷を受けたことから、米海軍の駆逐艦カーニーが、数機のドローン(無人機)を撃墜したと述べた。

ミサイルのうち1発は対艦弾道ミサイルだった、とCENTCOMは述べている。

フーシ派の報道担当者によれば、商船1隻を狙ったのは対艦ミサイル、もう1隻を狙ったのは海上ドローンだという。

足が付くニッチな兵器

フーシ派の「対艦ミサイルの備蓄は、ほとんどの競合国家に匹敵するばかりか、それを上回る」と語るのは、イギリスの民間研究機関、国際戦略研究所で中東防衛と軍事分析を専門とするリサーチフェロー、ファビアン・ヒンツだ。

フーシ派は密輸したりもらったりした兵器の情報を明らかにしていないため、数を特定するのはきわめて難しい、とヒンツは言う。

だが対艦巡航ミサイルと対艦弾道ミサイルは、「きわめてニッチな兵器で、イランかイランが武器供与しているフーシ派ぐらいしか保有していない」とヒンツは言う。

「そうした兵器を反政府勢力が持つことはきわめて異例だ」と語るのは、英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)のリサーチフェロー、シッダールト・カウシャルだ。

ロンドンを拠点とするシンクタンク「カウンシル・オン・ジオストラテジー」の国家安全保障担当リサーチフェロー、ウィリアム・フリーアによれば、フーシ派は当初、イエメン政府から奪ったミサイルをためこんでいたが、ここ数年は、イランから提供されるミサイルを備蓄しているという。

イランはフーシ派に対して、少なくとも6種類の弾道ミサイル、3種類の巡航ミサイル、8種類の徘徊型兵器に加えて、3種類の対艦弾道ミサイルおよびロケットを提供している、とフリーアは本誌に語った。

座談会
「アフリカでビジネスをする」の理想と現実...国際協力銀行(JBIC)若手職員が語る体験談
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

日銀、保有ETFの売却開始を決定 金利据え置きには

ワールド

米国、インドへの関税緩和の可能性=印主席経済顧問

ワールド

自公立党首が会談、給付付き税額控除の協議体構築で合

ビジネス

多国発行ステーブルコインの規則明確化するべき=イタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中