ミャンマー少数民族の武装勢力「連合軍」が一斉攻撃...カギを握る「中国の動き」は?
11月2日、国軍の拠点を奪取した武装勢力(MNDAAのSNSより) WWW.FACEBOOK.COM/KOKANG311
<ミャンマー国軍と少数民族の武装勢力との戦闘激化は、中国の権益に重大な影響を与える。情勢の急変を受けて中国はどう出るか>
中国の王小洪(ワン・シャオホン)国務委員兼公安相は10月30日、ミャンマー軍事政権と会談。両国が国境を接するミャンマー北東部で少数民族の武装勢力が攻勢に出るなか、「平和と安定」の回復について協議した。
11月1日付のミャンマー国営紙によると、首都ネピドーで会談した王と軍政トップのミンアウンフライン総司令官は、「反乱分子MNDAA(ミャンマー民族民主同盟軍)がミャンマー北東部の治安キャンプを攻撃し、平和と安定を損なおうとしている」問題を話し合った。
これに先立つ王とミンチャイン移民・人口問題相、ヤーピェ内相との会談でも、国境地帯の安定と平和、法の執行と治安に関する協力が議題に上った。
北東部シャン州北部では10月27日、少数民族武装勢力の連合軍が国軍に対する攻勢を開始した。王の訪問がそれと無関係とは考えにくい。
この攻勢の主力は「兄弟同盟」を組む華人系のMNDAA、アラカン軍、タアン民族解放軍の3勢力。国軍への攻撃は他地域でも同時展開されている。情報筋の推定によれば、同盟側の兵力は最大2万人に達するという。
国軍の前哨基地70以上を占拠
独立系放送局「ビルマ民主の声」は10月31日、「1027作戦」と呼ばれるこの攻勢の最初の5日間で、同州北部の国軍の前哨基地70以上を占拠したと伝えた。ウクライナ製の戦車2両を含む大量の武器と弾薬を奪取したという。
同盟側は現在、中国国境付近のチンシュエホーと、ミャンマー中部からチンシュエホーとムセの国境検問所を結ぶ主要道路上の要衝フセンウィを支配しているという。国軍は空爆で対抗しているが、地上軍の大規模な反攻はまだ行われていない。
新たな戦闘の激化は、中国の権益に重大な影響を与える。中国は「一帯一路」構想の一環として、雲南省とベンガル湾を結ぶ輸送回廊を建設中だ。この中国・ミャンマー経済回廊(CMEC)計画には、中国からミャンマー沿岸部までのハイウエーや鉄道のほか、南西部ラカイン州チャウピューの深海港や経済特区の整備が含まれる。
CMECのルートは、今回の攻勢で影響を受けている地域を直接貫いている。現在MNDAAが支配するチンシュエホーは、将来の経済特区に指定された町。抵抗勢力が分断に成功した北東部ラシオから中国国境に延びるハイウエーは、対中貿易の大動脈だ。
この地域で戦闘が続けば、避難民が国境を越えて中国に流入する可能性も高い。国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、11月2日時点でシャン州北部などの戦闘地帯で2万6000人近い住民が家を追われた。既に数百人が安全を求めて中国側に逃げ込んだとの情報もある。