「来ないでほしい」がエジプトの本音...ガザ避難民流入をなんとしても避けたい理由【アニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<エジプトがシナイ半島へのガザ避難民の流入を避けたがるのはなぜか? その理由を解説したアニメーション動画の内容を一部紹介>
イスラエルとアメリカがガザからの避難民を受け入れるよう圧力をかけても、エジプトは抵抗し続けてきた。アブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は「パレスチナの大義は全てのアラブ人の大義」と言うが、それでも受け入れられない裏には切実な理由がある。
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「来ないでほしい」がエジプトの本音...ガザ避難民の流入をどうしても避けたい理由【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
シシ大統領は先月18日、ガザ住民のシナイ半島への強制移送は許容できないと明言した。
というのも、シナイ半島には以前からイスラム過激派の諸勢力が潜んでおり、エジプトは反乱の鎮圧に手を焼いてきたからだ。もしも避難民にハマスの残党が紛れ込んでいてシナイ半島からイスラエルを攻撃するか、あるいは攻撃計画を練るだけでも、イスラエルはそれを口実にエジプト領土で軍事作戦を展開する危険性がある。
過去には、シナイ半島にパレスチナ国家をつくる構想が外部から持ちかけられたこともある。
「アラブの春」で失脚したホスニ・ムバラク大統領は1983年にマーガレット・サッチャー英首相(当時)と密約を交わし、レバノンにいるパレスチナ難民のシナイ半島移住を認めたとメディアが伝えた。しかし、本人は生前この報道を否定。さらに2010年にもイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相からシナイ半島にパレスチナ国家をつくる構想を提案されたが、これも拒否したと主張している。
イスラエル駐在のエジプト大使アミラ・オロンは先月11日、イスラエル軍の作戦のためにシナイ半島を避難区域にすることは許さないとの意思をX上で示した。
もしもガザ住民を受け入れれば、「一時的な避難」では済まず、恒久的な住みかとなる可能性もある。実際、過去のイスラエルとの紛争で近隣諸国に逃れたパレスチナ人の多くは、その後故郷に帰ることができなかった。
「エジプトに来ないでほしい」というのは、エジプトの宗教組織や多くの国民の本音でもある。
それでも最近、北シナイ県の知事が受け入れ準備を呼び掛けるなどして一定数の避難民を受け入れる動きを見せている。ただし、ガザ住民用の避難所は強制収容所並みに移動の自由が制限されるとの見方もある。
この地で10年以上も過激派組織「イスラム国」(IS)系列の武装勢力と戦ってきたエジプト軍は、過激分子の侵入を極度に警戒しているとアナリストらは指摘する。
エジプトは既にスーダンから難民30万人を受け入れている。これ以上難民が流入すれば、治安上のリスクだけでなく、国家財政がパンクしかねない。
12月に大統領選を控えるシシにとって、難民の大量流入はなんとしても阻止したい一線なのだ。
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