アメリカがウクライナを見捨てる日...米大統領選が戦争の結果に影響か?
THE WAR OVER THE UKRAINE WAR
この大統領選で特定の結果を願っているのは、バイデンやウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領だけではない。欧州の指導者たちも選挙戦を注視している。アメリカはバイデンの下で自分たちのパートナーであり続けるのか、それともトランプか似たような考え方の共和党候補の下で敵とも味方ともつかない国になるのか──。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が誰を応援しているかは言うまでもない。
バイデンの世界観は古い?
バイデンにとって、ウクライナ戦争は長引くという見通しは政治的に厄介な問題だ。彼が指揮しているのは西側とロシアの代理戦争だが、数多くの命と多額の戦費を費やしても、戦いに終わりは見えない。
米軍の派兵やロシア政府との対立激化の引き金を引くことなくウクライナの主権を守り、プーチンを地政学的に打倒するというのがウクライナ問題におけるバイデンの長期的戦略だ。しかし戦争の長期化により、再選しない限り実現は不可能だ。
アメリカ国民は基本的にはウクライナを支持している。だがアメリカがまたも外国の紛争に、間接的とはいえ長期間巻き込まれ、税金を使うことには懸念を持っている。バイデンにとっては、こうした外交政策が選挙戦で裏目に出る可能性もある。
「バイデンはこれまで一貫して国際主義者だった」と、ハーバード大学ケネディ行政大学院のトーマス・パターソン教授は言う。バイデンは「伝統的な同盟関係と、『自由世界』の盟主としての義務を果たすこと」の信奉者だという。「1950年代初頭なら(バイデンの世界観は)幅広い支持を集めただろう。今はそれがどれほどの意味を持つか疑問だ」
だが政権内外でバイデンを支える人々は、彼の皮算用をこう分析する。ウクライナに関わる出費はアメリカがアフガニスタン戦争に費やした2兆ドル超と比べればささやかな額であり、アメリカ国民の生命を危険にさらすことなくロシアを弱体化させ世界ののけ者にすることができるなら安い買い物だ──。
「専制主義と対峙する民主主義国家を支援する際のアメリカの利益について語るバイデンの言葉は、決して空虚な理想主義ではない。1945年からアメリカが掲げてきた抜け目ない戦略の一環だ」と、駐ポーランド米大使を務めたダニエル・フリードは言う。「ウクライナ支援のための出費は、非常にいい投資だ」
だが有権者の同意が得られるかどうかは分からないし、バイデンのアプローチが将来の米外交のモデルとなり得るのかどうかも不明だ。