メドベージェフが発した核より現実的で恐しい戦線拡大の脅し
Russia Threatens Direct Attacks on US Allies Over Soldiers, Taurus Missiles
メドベージェフ(左から2番目)の「脅迫」はこれが初めてではないが(2022年5月9日、戦勝記念日の軍事パレードで)
<もしドイツがタウルス・ミサイルをウクライナに供与すれば、ロシアはドイツ国内のタウルス製造工場を攻撃対象にする、とメドベージェフは脅した。ウクライナ国内のNATO軍関係者を標的にする、とも。いずれもNATO全体に戦争を拡大させかねない脅しだ。>
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ドミトリー・メドベージェフ前ロシア大統領が、イギリスとドイツの今後の軍事支援を強く牽制した。もしイギリス軍がウクライナ兵の訓練をウクライナ国内で行うという計画を実行に移したら、そのイギリス人は攻撃対象になる。またもしドイツがウクライナに長距離巡航ミサイル「タウルス」を提供するようなことがあれば、ドイツ国内のタウルス製造工場もロシア軍の正当な攻撃目標になる、というのだ。
イギリスに対する脅しの発端となったのは、軍事用ハードウェアの「訓練と生産」をウクライナ領内に移す方向で協議している、というイギリスのグラント・シャップス国防相の発言だった。
英紙サンデー・テレグラフによれば、シャップスは「私は今日、訓練をもっとウクライナに近いところ、いずれはウクライナ領内で実施することについて話し合っていた」と語った。
だがリシ・スナク英首相は「ゆくゆくはそういうこともある、という話であって、今すぐに実施するわけではない」と、国防相の発言を一部、訂正した。
「国防相が言ったのは、ウクライナ国内で訓練を行うことは将来的には可能かもしれないということだ」とスナクは10月1日、保守党会合の前に語った。「イギリス軍の兵士が今、戦地に派遣されることはない」
「われわれは、ウクライナ人の訓練をイギリス国内で行っている」と、スナクは説明した。
メドベージェフは1日、テレグラムに投稿し、イギリス軍兵士がこのような任務に就いた場合、ロシア軍の「合法的な標的」になると述べた。
兵員は「容赦なく破壊されるだろう」と、現在ロシアの安全保障理事会の副議長を務めるメドベージェフは書いている。
NATO全体に拡大も
米シンクタンクのランド研究所は9月末に発表した報告書で、ロシアのウクライナへの攻撃によってウクライナ国内にいるNATO関係者が何かで死亡するなどの事件が起きれば、ウクライナでの戦争がエスカレートする可能性があることを示唆した。
メドベージェフは、ドイツがウクライナへのタウルス・ミサイル供与を決めた場合、ロシアは「これらのミサイルが製造されているドイツの工場を、国際法を完全に順守しながら」攻撃することになる、とも警告している。
NATOはこれまで、ロシアの侵攻に対抗してウクライナを支援しているだけであって、NATOとロシアは戦争状態にはないと主張してきた。だがロシアの意図的な攻撃によって戦争がNATO加盟国に波及すれば、加盟国に対する攻撃はNATO全体の攻撃とする北太平洋条約第5条が発動されて戦争がさらに拡大する恐れがある。