ロシア高2新教科書、ウクライナに関する嘘満載で不都合な歴史は抹消...編者は歴史家でなく【アニメで解説】
Newsweek Japan-YouTube
<新学期を迎えたロシアの高校生たちに配られた新たな歴史の教科書。陰謀論満載のその内容を取り上げたアニメーション動画をダイジェスト的に紹介する>
過去を書き換え、史実を隠し、愛国心を刷り込む──ウクライナ侵攻を正当化し、残虐の歴史を葬った400ページ超にも及ぶロシアの新たな教科書。その驚愕の内容とは?
本記事では、本誌YouTubeチャンネルの動画「「悪いのは西側」ロシアの新しい歴史教科書には陰謀論がてんこ盛り...その驚愕の内容とは【アニメで解説】」の内容をダイジェスト的に紹介する。
9月1日、ロシアとロシアが不当に占領するウクライナの一部地域でも新学期が始まり、高校1年生と2年生に新しい何冊かの教科書が配られた。なかでも注目すべきは、1945年から今日までを扱う高2の『ロシア史』の教科書で、対ウクライナ戦に関するクレムリン流の解釈を次世代に刷り込もうとしている。
この教科書の編者ウラジーミル・メジンスキーは歴史家ではなく、ウラジーミル・プーチン大統領の下で文化相を務めたプロパガンダのプロだ。「ロシアの国益を損なう歴史改ざんに対抗する大統領委員会」の一員として、ひたすらプーチン体制の美化に取り組んできた人物なのだ。
ロシアは常に外敵に包囲され、悪者扱いされてきた──といったゆがんだ歴史観はソ連時代からのものだが、この教科書はさらに踏み込んだ内容だ。
ナチス・ドイツを撃破したのは自分たちなのに、その後は西側諸国とその同盟国に裏切られてばかりいると主張。一方で、スターリン時代の大量虐殺や強制移住、政治犯の収監、大量粛清などにはほとんど触れていない。
歴史の抹殺もみられる。例えばクリミア半島は「昔から」ロシアのもので、その住民の「絶対的多数」は民族的ロシア人だとされているが、クリミアでロシア人が多数派になったのは占領と「民族浄化」の結果だ。
スターリンは先住のタタール人に「ナチスの協力者」のレッテルを貼り、クリミア半島から追い出して辺境への移住を強い、膨大な数の犠牲者を出した。タタール人の追放後に組織的な入植が行われ、無人になったクリミアの町や村に民族的ロシア人が住みついた事実は都合よく省かれている。
1960年代から70年代にかけての反体制運動についても、「一定の検閲があった」とさらっと触れる程度。これについても、悪いのは検閲された芸術家や作家、映画監督や音楽家たちだと論じている。
全編にわたって強調されるのは、ロシアという国の「見え方」だ。
ベルリンの壁の建設もソ連時代の粛清や集団移住も、それがロシアの見え方をどう変えたかという視点で記述される。この世界には自然に起きることなど一つもなく、全ての出来事の裏には隠された意図がある──そういう陰謀史観だ。
この教科書は、どう見ても暗いロシア経済の先行きと国際的孤立を「明るい未来の先駆け」と説明している。
「今のロシアにはチャンスがあふれている」というが、それは卒業後に徴兵令状が来て、どこかの国の焼け野原で占領地を守るためと称して塹壕に放り込まれなければの話だ。
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