最新記事
米中関係

「パンダ大使」に長いお別れ...米中友好の象徴、両国関係の冷え込みで今後はどうなる?

The Panda Party's Almost Over

2023年9月14日(木)17時00分
リシ・アイエンガー

摩擦の兆候は既に表れている。テネシー州のメンフィス動物園の雄パンダ、ローロー(楽楽)が今年2月に死亡し、痩せ細った雌のヤーヤー(YY)の画像が出回ると、中国のネットユーザーや国営メディアでは動物虐待を疑う声が噴出。動物園は疑惑を否定し、20年間に及ぶ取り決めが期限を迎えた今年4月、ヤーヤーを返還した。

地政学vsパンダ保護

アメリカ側も黙ってはいない。ナンシー・メイス下院議員(共和党)は昨年、米国内で誕生したパンダはアメリカに所有権があると主張する法案を提出した(もっとも貸与契約は通常、動物園が中国側と直接交渉するため、米議会は発言権を持たない)。

地政学がパンダ保護にもたらす影響を、国立動物園のスミスは重視していない。「実際に話し合いをしているのは、動物や野生生物、保護活動に携わる人々だ」と指摘する。

「私たちは誰も、より大局的な地政学的状況について語る資格はないが、話し合いの中身はどれも非常に前向きだ。とても協調的で、最善の結果を目指している」

国立動物園は今のところ、3頭をベストな形で送り出すことに注力している。7月にはメイシャンの25歳の誕生日を祝福し、8月の終わりにはティエンティエンの26歳の誕生日も祝った。さらに、近く「ジャイアントなお別れイベント」を開催する予定だ。

「(返還されるのは)分かっていても認めたくない」と、パンダ好きのクーは嘆く。「ベイベイのときのように泣いてしまうと思う。しかも、3頭ともいなくなるなんて」

代わりのパンダが来なかったら? 米中間の緊張を考えると、あり得る話だ。

「そんな事態は考えられない」と、バオバオの誕生当時、パンダ飼育員だったスミスは話す。パンダの所在にかかわらず、中国側との対話は継続するものの、ワシントンとパンダの長い絆は簡単には切れないという。

「とてもうまくいっているプログラムだ。ジャイアントパンダのいない国立動物園は想像もできない」

From Foreign Policy Magazine

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インド、中国人専門職のビザ審査迅速化 関係改善へ

ワールド

ベトナム、精製レアアース輸出を規制 国内産業支援で

ビジネス

プラダがインド製サンダル発売へ 文化盗用での炎上で

ワールド

英国でインフル変異株大流行、医師が「最悪の事態」を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中