「パンダ大使」に長いお別れ...米中友好の象徴、両国関係の冷え込みで今後はどうなる?
The Panda Party's Almost Over
摩擦の兆候は既に表れている。テネシー州のメンフィス動物園の雄パンダ、ローロー(楽楽)が今年2月に死亡し、痩せ細った雌のヤーヤー(YY)の画像が出回ると、中国のネットユーザーや国営メディアでは動物虐待を疑う声が噴出。動物園は疑惑を否定し、20年間に及ぶ取り決めが期限を迎えた今年4月、ヤーヤーを返還した。
地政学vsパンダ保護
アメリカ側も黙ってはいない。ナンシー・メイス下院議員(共和党)は昨年、米国内で誕生したパンダはアメリカに所有権があると主張する法案を提出した(もっとも貸与契約は通常、動物園が中国側と直接交渉するため、米議会は発言権を持たない)。
地政学がパンダ保護にもたらす影響を、国立動物園のスミスは重視していない。「実際に話し合いをしているのは、動物や野生生物、保護活動に携わる人々だ」と指摘する。
「私たちは誰も、より大局的な地政学的状況について語る資格はないが、話し合いの中身はどれも非常に前向きだ。とても協調的で、最善の結果を目指している」
国立動物園は今のところ、3頭をベストな形で送り出すことに注力している。7月にはメイシャンの25歳の誕生日を祝福し、8月の終わりにはティエンティエンの26歳の誕生日も祝った。さらに、近く「ジャイアントなお別れイベント」を開催する予定だ。
「(返還されるのは)分かっていても認めたくない」と、パンダ好きのクーは嘆く。「ベイベイのときのように泣いてしまうと思う。しかも、3頭ともいなくなるなんて」
代わりのパンダが来なかったら? 米中間の緊張を考えると、あり得る話だ。
「そんな事態は考えられない」と、バオバオの誕生当時、パンダ飼育員だったスミスは話す。パンダの所在にかかわらず、中国側との対話は継続するものの、ワシントンとパンダの長い絆は簡単には切れないという。
「とてもうまくいっているプログラムだ。ジャイアントパンダのいない国立動物園は想像もできない」