最新記事
環境

紙ストローは、本当に環境に優しい?「永久化学物質」の割合が「プラ以上」というショッキングな研究結果が

They Might Not Be Better

2023年9月8日(金)17時55分
パンドラ・デワン
紙ストロー

紙ストローは多くのファストフード店で導入されているが…… XSANDRA/ISTOCK

<プラスチック製ストローの代替品としてよく見かけるようになった紙ストローだが、実は有害な物質PFASが含まれていた>

多くの飲料チェーンやファストフード店がプラスチックゴミを削減するため、紙製のストローを使い始めた。だが科学者たちは、こうした紙ストローには有害なPFAS(有機フッ素化合物の総称)が含まれていることが多く、プラスチックと比べて環境にそれほど優しくない可能性があると警告している。

ナショナル・ジオグラフィック誌によると、2019年以前はアメリカだけで毎日推定5億本のプラスチック製ストローが使われていた。その後、多くの州で使用が禁止され、たくさんの企業が紙製の代替品を開発した。

しかし、学術誌フード・アディティブズ・アンド・コンタミナンツに掲載された新しい研究論文によれば、紙ストローにも独自の問題がある。

「紙や竹など植物由来の素材から作られたストローは、プラスチック製よりも持続可能性が高く、環境に優しいと言われることが多い」と、この研究に参加したアントワープ大学(ベルギー)の環境科学者ティモ・グローフェンは指摘する。「しかし、PFASが含まれていることを考えれば、この表現は必ずしも事実ではない」

癌のリスク上昇の可能性

グローフェンらは39種類のストローを分析し、紙製は他の素材を使用したものよりPFASの含有可能性が有意に高いことを突き止めた。

「永久化学物質」とも呼ばれるPFASは、さまざまな日用品に含まれている。アメリカの有害物質・疾病登録局(ATSDR)によると、これらの化学物質は血中コレステロールや血圧の上昇、免疫力の低下、特定の癌のリスク上昇を引き起こす可能性があるという。

PFASは人間の健康にとって危険なだけでなく、環境中に蓄積して自然の水源を汚染する恐れもある。

分析した紙ストローのうち、90%にPFASが含まれていた。プラスチック製は75%、ガラス製は40%、スチール製からは検出されなかった。

これらの紙ストローに含まれるPFASの濃度は極めて低く、ほとんどの人はストローをたまにしか使わないため、人体への健康リスクはかなり小さい。それでもPFASは時間とともに人体にも環境にも蓄積される可能性があり、どれぐらい深刻な影響が出るかはまだ分からない。

この研究は紙や竹製のストローが言われているほど「クリーン」ではない可能性を明らかにした。グローフェンは言う。「紙や竹のストローにPFASが含まれているという事実は、それらが必ずしも『生分解可能』ではないことを示している」


20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


自動車
DEFENDERとの旅はついに沖縄へ! 山陽・山陰、東九州の歴史文化と大自然、そして沖縄の美しい海を探訪するロングトリップ
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中