最新記事
中国

習近平主席、G20「欠席」は嫌がらせ? 欧米の批判から逃げた? 中国のメッセージを読み解く

2023年9月7日(木)17時48分
チャールズ・ラベリー
2022年G20サミットに出席した習近平国家主席

インドネシアで開かれた2022年のG20サミットには出席したが…… WILLY KURNIAWANーPOOLーREUTERS

<多国間の首脳外交を強調し、BRICSサミットには出席した習近平が、プーチン露大統領とともにG20サミットを欠席するのはなぜか>

「プーチンと習、G20サミットを欠席へ」──あるインドの人気タブロイド紙にこんな見出しが躍った。

だが、見出しの下の本文のはそこまで断定的ではない。「報道によれば、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はインドで開催される20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に出席しないとの見方が有力だ」

やや拙速気味のこの見出しは、インドの首都ニューデリーで9月9日に始まるG20サミットへの現地メディアの熱の入れようと、出欠を明言しない習に対する国内外の関心の高さを示している。この習の沈黙は世界の2大人口大国同士の関係について、一定の見方を提供するものでもある。

欧米メディアが引用した複数の情報筋によると、習は出席しない意向だ。ある匿名のEU外交筋は、代わりに李強(リー・チアン)首相が参加すると語った。

ただでさえ微妙な中印関係は8月末、中国が新しい地図を公表したことでさらに悪化した。この地図は両国が帰属をめぐって対立しているアルナチャルプラデシュ州や、中国の実効支配下にあるがインドも領有権を主張しているアクサイシン地域など、近隣諸国との係争地を中国領として表記している。

インド政府はこれに「強い抗議」を行った。観測筋からは、G20サミット直前の意図的な嫌がらせという見方も出ている(中国はインド側の批判に取り合わず、「冷静さを保つ」よう呼びかけた)。

グローバルサウスのリーダーの地位を争う

今回のG20サミットで議長国を務めるインドは、この機会をグローバルサウスのリーダー国としての地位を固めるための新たな一歩とみている。

習が2013年に中国の指導者になって以来、対面で開催されたG20に出席しなかったのは新型コロナウイルスの蔓延が続いていた21年だけだ。地元のヒンドゥー紙は、こう指摘した。

「インド行きを見送るという決定の意味は大きい。1週間前には、南アフリカで開催されたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)サミットに合わせてモディ首相と会談しているのだから」

習の欠席騒動には、中印両国によるグローバルサウスの主導権争いという側面もありそうだ。中国側はモディの「縄張り」で世界の指導者たちと会うためにニューデリーを訪問する姿をインド側のPR戦術に利用されたくないと考えた可能性もある。

習は欧米にメッセージを送っている可能性もある。中国が今後、力を入れていきたい多国間の枠組みはBRICSとASEAN(東南アジア諸国連合)なのかもしれない。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

オランダ政府、ネクスペリアへの管理措置を停止 対中

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

ウクライナに大規模夜間攻撃、19人死亡・66人負傷

ワールド

中国、日本産水産物を事実上輸入停止か 高市首相発言
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 5
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中