<景気回復が遅れても大規模な財政出動には慎重。習近平政権の新たな経済政策は、社会の不安や市場の不満に耐え切れるか>

中国にとって、さまざまな意味で厳しい夏になった。政界では不透明な状況で外相が更迭された。軍部では汚職と機密漏洩の噂が広まるなか、2人のトップが粛清された。外交では対米関係が萎縮したままだ。国内では北部が洪水で壊滅的な被害を受け、政府の対応に批判が集まっている。

しかし、指導部にとって最大の頭痛の種は経済だ。パンデミック後に期待された景気のリバウンドは行き詰まっている。消費者と投資家の心理が冷え込み、消費者物価指数の下落や若年層の記録的な失業率など、データが発表されるたびに状況は悪化している。

主な問題は、不動産部門の流動性の危機だ。不動産開発最大手の碧桂園(カントリー・ガーデン)や信託大手の中融国際信託の支払いが滞り、債務不履行が相次ぐ恐れが出てきた。こうした弱気のシグナルを受けて、世界の投資銀行は中国株と中国経済全体の見通しを引き下げている。

上海にいる筆者から見ても、陰鬱で悲観的な雰囲気は明らかだ。今年は習近平(シー・チンピン)国家主席の3期目が始動し、中国は新型コロナウイルスのパンデミックを乗り越えて復活を遂げるはずだった。しかし、実際は、経済実績はほぼ全ての指標で予想を下回っている。

政府は現在の回復軌道が不十分であることを認め、改善策を試みている。1月以降、一連の金利引き下げや不動産購入制限の緩和、株式市場支援策などで経済を押し上げようとしてきた。

7月末に共産党中央政治局は不動産部門の支援強化の方針を示した。習は8月中旬に発表された演説文(2月の演説とされている)で、経済的圧力が続いているが「歴史的な忍耐」と堅実な前進が必要だと強調している。

共産党の政治的正統性

ただし、こうした動きは実質的というよりレトリックにすぎない。大規模な景気刺激策が取られないことは、経済的苦境と向き合う中国指導部の決断力の限界を示唆している。GDPの成長率は指導部が許容できる範囲で踏みとどまっており、社会不安は政治的に懸念されるレベルまで悪化していないというわけだ。

長い目で見れば、彼らは現在の難局を、経済の新常態(ニューノーマル)に向かうために必要な調整と捉えている。中国共産党は「新発展理念」の下、「成長第一」の考え方から脱却し、習が「資本の無秩序な拡大」と呼ぶものを「より質の高い」発展に置き換えようとしている。これは景気刺激策の引き金が引かれない理由の1つでもある。

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中国経済に関する不利な報道を抑圧
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