最新記事
アメリカ経済

フィッチによる史上2番目の米国債格下げの根拠ってこんなに些細なことだったのか

Why Fitch's Credit Downgrade Is A Serious Debt Warning

2023年8月3日(木)20時07分
オースティン・アロンツォ

シンクタンク「ヘリテージ財団」グローバー・M・ハーマン連邦予算センターのディレクター、リチャード・スターンは、米国の債務に関する現在の主な課題は利息の支払いだと言う。米財務省によれば、1日時点での公的債務残高は32.5兆ドル。米商務省経済分析局によれば、7月27日時点で米国のGDPは26.8兆ドルだ。

スターンは、連邦政府の収入の40%が公的債務の利息の支払いに充てられている。過去3年で、連邦政府の債務について支払われる利息額は50%以上増加した。

国の債務の増加に伴って利払いも増えるため、米政府はそのコストを賄うための方法を見つける必要がある。紙幣の増刷や米ドルの価値の引き下げ、増税などだ。債務問題は新しい問題ではないが、党派対立が激化するなか、予算の策定はますます困難になっている。

米議会予算局の元局長で米労働省労働統計局の役員を務めるキース・ホールは、議会予算局と米政府監査院は何年も前から議員たちに対して、債務問題の深刻さについて警告してきたと述べた。ホールはフィッチの今回の格下げについて、本格的な経済危機を意味するものではないが、米国の債務返済能力に対する信頼が損なわれつつあることの兆候だとアイビータイムズに語った。

政府は債務返済のプランを示せ

ジョージ・メイスン大学マルカタス・センターの客員研究員であるホールは2007年以降、米国の債務残高は5兆ドルから現在の水準にまで増加したと指摘。今後10年でこれがさらに20兆ドル増える可能性が高いとしている。

ジョージ・メイスン大学マルカタス・センターの客員研究員であるホールは現在の米国について、支出が収入を30%も上回っており、この状況が変わる兆しもないと説明した。その上、米財務省は現在、債務の返済ではなく借り換えを行っている。米政府には債務返済のための明確なプランがないのだと彼は指摘した。

こうした全てのことが、米経済の足を引っ張っているとホールはアイビータイムズに語った。最終的にはこれが経済成長の重しとなり、米国民の生活水準にも影響を及ぼし始めるだろう。

専門家たちは、米国が債務問題に真剣に取り組むことで、この状況を覆すことができるという点で意見が一致した。ホールは、債務上限の引き上げに関する6月の合意は、それが順調に進んでいることを示していると述べたが、政治家たちは何らかの危機が間近に迫らない限り、債務問題になかなか対処しないとも指摘した。

ホールは、ワシントンの議員たちは今後も取り組みを続け、借り入れを制限する方法を見出す必要があるとの考えを示した。ボッチアは、債務問題への対処を目指す超党派の機関を設立することが、債務問題に真剣に向き合ういい方法だろうと述べた。

ウォルファースはアイビータイムズに対して、「(フィッチの)判断は、米国の政治家が自分たちの責任を真剣に受け止めていないことを示している」と述べ、さらにこう続けた。「変わらなければならないのは政治家たちだ。彼らが事態を真剣に受け止めることが必要だ」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米アルファベットが200億ドル調達、異例の100年

ワールド

仏政府諮問機関、中国品大量流入対策で30%関税かユ

ワールド

米政府、ホルムズ海峡通航の自国船籍商船にイラン領海

ワールド

アラブ諸国とトルコ・エジプト、西岸で権限拡大目指す
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 4
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 5
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 8
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 9
    韓国映画『しあわせな選択』 ニューズウィーク日本…
  • 10
    【銘柄】なぜ?「サイゼリヤ」の株価が上場来高値...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中