ウクライナの子供たち2万人を拉致...未曽有の戦争犯罪に突き進むプーチンの目的とは?
UKRAINE’S STOLEN CHILDREN
まず、侵略開始3カ月後の22年5月30日、プーチンはウクライナ人孤児をロシア人家庭の養子にし、ロシア国籍を付与するプロセスを簡素化するための大統領令に署名している。さらに22年後半にかけて、クリミアを中心とした地域でウクライナ人の子供たちがロシア人家庭に引き渡される映像が、ロシアのメディアで頻繁に流されるようになった。
さらに今年3月16日には、プーチンが大統領公邸執務室にリボワベロワを招き、ウクライナの子供たちのロシア家庭への養子縁組が順調に進展していることを報告させた。この会談の一部はテレビで放映され、その際にリボワベロワがマリウポリ出身の10代の男子を養子としたことも、本人の口から語られた。
つまり、ロシア側はウクライナ人の子供をロシア支配地域やロシア本土に連れ去り、積極的に養子縁組を進めていることを一切隠していない。むしろ、ウクライナの子供たちを戦禍から救うための人道支援や慈善事業であるかのように喧伝している。こうした側面が皆無であることを立証するのもまた困難ではあるが、最大の問題は保護者や関係者の同意なく、そして当事者である子供の意思に反してロシア当局が連れ去りを主導し、ほぼ強制的にロシア人の家庭に養子縁組させている事例が大多数を占めていることである。
プーチンの逮捕はほぼ不可能
ウクライナ人の家族が望んでも、子供を捜すことも取り返すことも困難を極めるのであれば、ロシア側による「人道支援」という主張は一気に信憑性を失う。ICCの判断の背景には、プーチンに逮捕状を出さなければ同種の犯罪の再発を止められないとの判断があったとされる。
とはいえ、プーチンの逮捕の実現はほぼ不可能とみられていることもまた事実である。ICCから逮捕状が出た以上、ICCの設置法「ローマ規程」に加盟する123カ国には、プーチンを逮捕する義務が生じる。しかし逆に言えば、プーチンがロシア国外に出てICC加盟国に入国しなければ逮捕することはできない。
それでも、ICCによる逮捕状の効果は確実に出つつある。プーチンは8月に南アフリカで開催が予定されているBRICS首脳会議への対面出席を取りやめている。ICC加盟国の南アフリカはプーチンが入国した場合には拘束する義務があったが、同国はプーチン拘束に後ろ向きの姿勢を見せていた。今回のプーチンの対面出席の取りやめは、南アフリカがICC加盟国としての義務とロシアとの関係の板挟みで苦境に陥ったことを、ロシアとしても無視できなくなったことを示唆している。