ウクライナの子供たち2万人を拉致...未曽有の戦争犯罪に突き進むプーチンの目的とは?
UKRAINE’S STOLEN CHILDREN
ロシアがこうした連れ去りを行う真の目的は十分に解明されているとは言い難い。かつて日本が経験したシベリア抑留のように、人口減が見込まれるロシアにおける労働力の確保という見方もある。ロシア当局はこの連れ去りを「戦争に伴う一時的な子供の保護措置」と説明し、ウクライナ側は「民族浄化の試み」であるとしており、両者の言い分は真っ向から食い違う。
連れ去りは組織的かつ徹底的
しかし仮にこれがロシアの主張どおりに「一時的な保護措置」であるなら、前述したようなロシア語の使用の強制や、ウクライナ人としてのアイデンティティーを奪うための措置を行うことの説明がつかない。
ウクライナの多くの識者はこの措置を、同国の将来を担う子供たちを物理的に引き離し、ウクライナ人の子供を「元手」として、「ウクライナに敵対的なウクライナ出身者」を人工的につくり上げる試みであると指摘する。ロシアが将来的に再びウクライナに侵攻を試みるのならば、真っ先に動員されるのはこうしたウクライナから連れ去られた子供たちだろう、とも。残念ながらこのような見方が排除できないほど、ロシアによる子供の連れ去りは組織的かつ徹底的に実施されている。
こうした状況の中、国際刑事裁判所(ICC)は今年3月17日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)に逮捕状を出した。ウクライナにおけるロシア占領地域から子供たちをロシアに不法に移送したことは戦争犯罪に当たるとの理由だ。ICCのカリム・カーン検察官は「子供たちを戦争の戦利品として扱うことは許されない」と、ロシア当局を非難している。
問題発覚から1年足らずでICCが逮捕状の発出に踏み切ったことは、事態の深刻さとロシアの行為の悪質性をめぐる国際社会の認識が共有された結果と言える。しかしそれでも、ICCがプーチンを戦争犯罪人として名指しし、逮捕状を出す決定に至ったことは、多くの人を驚かせた。
ICCがなぜこのような重大な決定に踏み切ったのか。その背景には、プーチンが子供の連れ去りに関して直接的に指示を出していることを示すさまざまな証拠が存在したことが挙げられる。