ロシア軍機の墜落、5機に1機は「自損」と判明(本誌調べ)
Revealed: One in Five of Russian Air Force Losses During War Self-Inflicted
それによると、221機のうち少なくとも48機、つまり21.7%は戦闘に関係なく墜落したとみられる。内訳を見ると、ジェット戦闘機など有人機墜落の26.7%、軍用ヘリ墜落の17.5%は自軍のミスによるものだ。
戦闘中、非戦闘時に関わらず、報告されていない墜落もあり(その一部はこの後も伏せられたままだろう)、実際には自軍のミスで失われたロシア軍機の割合はもっと多いとみられるが、確認された割合だけでも、ロシア空軍の劣悪な整備・訓練状況が見て取れる。
訓練中の事故は完全には避けられないし、想定内ではあるが、人命が関わるため、まともな軍隊なら犠牲を最小限に抑えるための安全策を講じると、ハーグ戦略研究所(HCSS)の戦略アナリスト、フレデリク・マーテンズは本誌に語った。「ロシア軍には経験を積んだパイロットが決定的に不足している」
ウクライナ侵攻以前から、ロシア軍はパイロットの基本的な訓練すら十分に行っていなかった。そのため侵攻開始段階では、ジェット戦闘機の保有数に比べ、経験を積んだパイロットの数がはるかに少なく、兵士たちはNATOの訓練基準の半分程度の飛行時間で作戦遂行を命じられたと、マーテンズは指摘する。練習機の不足も侵攻前から深刻だったという。
「NATOのパイロットは高度な練習機を使って、操縦訓練を重ねるだけでなく、他のパイロットたちと複雑な作戦の訓練を行うが、それに比べ、ロシア軍のお粗末さは目も当てられないほどだ」
指導教官が実戦に
地上戦の泥沼化に伴い、ロシア空軍の未熟なパイロットの出番が増え、ウクライナ軍に撃墜されるケースも激増。ついにはパイロット養成の指導教官が実戦に駆り出されるありさまとなった。
「指導教官が新入りの兵士を訓練できる時間がさらに減り、ますます事故が起きやすくなった」
ロシア空軍はパイロットが足りないから人員を補充しなければならないが、人を集めてもまともな訓練ができないというジレンマに陥っていると、マーテンズは言う。
おまけに保有機の整備も不十分で、安全対策に疑問がつきまとう。パイロットの未熟さに加え、これらの要因が重なって、敵にやられる前に自滅するケースが異常に多くなっていると、マーテンズはみる。
終わりの見えない消耗戦の心理的プレッシャーも事故の多発を招くと、同じくHCSSのアナリストのポール・ファンホーフトは指摘する。致命的なミスは、「兵士たちが長期にわたって極限的なストレスにさらされているときに起きるものだ」。
本誌はこの問題についてロシア国防省にメールで見解を求めている。