日本人にも喜ばれる訪日客向けの観光施策とは? 東京を魅力的な旅行先にするためにできること(デービッド・アトキンソン)
たとえば近年、要所要所に、英語やほかの言語のネイティブスピーカーが書いた、あるいはチェックした案内表示や標識が設置されるようになってきた。外国人観光客にとっては、「和製英語」を発見するのも楽しい経験のひとつだが、重要な情報は正確に伝わるものでなくてはならない。無料Wi-Fiも導入され、電車や地下鉄も以前より利用しやすくなった。
多くの外国人観光客は、事前に勉強するよりも、滞在中に日本の歴史や文化を学びたいと思っているので、さまざまな情報が現地で提供されることを期待している。つまり、日本について予備知識がほとんどないのだから、日本の文化や歴史をわかりやすく説明する工夫が必要だ。世界のほかの国々から見ると、日本は非常に独特な文化を持っているからこそ、日本に詳しい人だけでなく、すべての旅行者が楽しめるようにする必要がある。こうした情報を適切に伝えることは、予想以上に難しいことであり、提供する側にも自国のみならず世界に関する深い理解が必要だろう。
日本文化を楽しく、オーセンティックに
こうした努力の大部分は訪日外国人を念頭においてなされているが、実は、解説案内板などの設置は日本人にも喜ばれている。たとえば、東京国立博物館が英語をはじめ複数の言語で展示品の解説を表示するようになったとき、日本語の説明も加筆され、展示品の歴史的・文化的な意味合いがこれまで以上に丁寧に説明されるようになったのだ。これによりその展覧会は、海外からの来館者だけでなく、日本の来館者にも好評を博した。
旅先で何らかのアクティビティに参加することは、世界的なトレンドになっている。日本の文化も、見るだけ、説明を聞くだけだった時代から、体験する時代になってきた。日本の伝統文化は、外国の文化や現代の日本文化とも大きく異なるから、それを経験できるのは大きな魅力だ。何かをただ見聞きするのとは違い、より直接的で内面に働きかける経験ができる。茶会に参加したり、生け花をやってみたりすると、日本の文化をより深く理解できるようになるだろう。