最新記事
ウクライナ情勢

<双方向マップ>ウクライナ軍の反転攻勢1カ月、支配地域を広げたのはロシア軍

Map Reveals Russia's Progress During Ukraine Counteroffensive

2023年7月11日(火)20時18分
ニック・モルドワネック

ロシア軍に向けて榴弾砲を発射したウクライナ軍兵士(バフムト、7月5日) Sofiia Gatilova-REUTERS

<動画>ロシアの「竜の歯」をウクライナ軍のチャレンジャー2戦車があっさり突破する様子

この夏のウクライナによる反転攻勢は、同国政府が望んでいたほど順調には進みそうにない。ウクライナ軍は、再び守りを固めたロシア軍が、両国の間に延びる長大な国境線沿いに設けた防衛線に綻びを見つけなければならない。

ウクライナ軍の兵士たちが反転攻勢を開始したのは、1カ月前の2023年6月10日。兵士たちはその初日だけで、ウクライナ東部および南部国境、そしてルハンシク州の町ビロホリウカで25の戦闘に関わり、重要地区で一握りの村を解放した。

だが、これをかつての大進撃と比べると見劣りは否めない。2022年の9月6日〜10月2日の約1カ月に実施した反転攻勢では、ウクライナ軍は500以上の集落と4600平方マイル(約120ヘクタール)の領土を奪還した。つまり現在進行中の反攻は膠着状態に陥っている。ウクライナのボロロディミル・ゼレンスキー大統領は、現在の状況を「望んでいたよりも遅い」と表現した。

今春から初夏の時期、ウクライナ軍が次の攻勢に向けた計画立案に時間をかける間に、ロシア軍は準備を整え、約966キロメートルの前線に沿って、自軍の拠点を強化した。ロシア軍がウクライナ軍を押し返し、陣地を得ることも可能になった。

米陸軍の元准将マーク・キミットはウォールストリート・ジャーナルの取材に対し、ウクライナ軍の側には「今のところ顕著な進展はみられない」と指摘し、ウクライナ軍は前線地帯で「(敵の)弱点を見極めようとしている」と述べた。

両軍にとって、ドネツク州バフムトは、軍事的に優先度が高い要衝であり続けている、とキミットは述べた。ウクライナ軍がこの街に進軍すれば、ロシアとの国境に直接向かう道を進軍できるからだ。

ザポリージャ州の都市ザポリージャおよび港町ベルジャーンシクも極めて重要だ、とキミットは指摘した。なかでも前者には、欧州最大の原子力発電所が置かれている。

一方、ワシントンDCに拠点を置くシンクタンク、戦争研究所(ISW)が7月9日付で発表した報告書によると、ウクライナ陸軍司令官で大将のオレクサンドル・シルスキーは、ウクライナ軍がバフムトに向けて成功裏に進軍を続けており、ベルジャーンシクおよびメリトポリでも作戦を継続中だと述べた。

その2日前の7月7日には、ウクライナ国防次官のハンナ・マリャルが、同国軍部隊が、バフムト南部で1キロ以上前進したと報告した。ロシア側の情報筋も、ウクライナがドネツク州西部およびザポリージャ州西部を攻撃したと伝えている。

SDGs
2100年には「寿司」がなくなる?...斎藤佑樹×佐座槙苗と学ぶ「サステナビリティ」 スポーツ界にも危機が迫る!?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

外国勢の米国債保有、9月は減少 日本が増加・中国減

ワールド

米クラウドフレアで一時障害、XやチャットGPTなど

ワールド

エプスタイン文書公開法案、米上下院で可決 トランプ

ビジネス

トヨタ、米5工場に1400億円投資 HV生産強化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中