最新記事
アメリカ社会

「マイノリティ優遇」は憲法違反...人種に基づく「差別是正措置」に反対する声がアメリカで多数派になり始めた意味とは?

End of an Unpopular Law

2023年7月6日(木)16時07分
ニック・モルドワネク(政治担当)

カリフォルニア州では、1996年の住民投票でアファーマティブ・アクション禁止が決まった後、カリフォルニア大学の中でも競争率の高いキャンパスのマイノリティー入学者数が50%、またはそれ以上減少している。これは、同州の人口統計上の変化に即さない傾向だ。

95年当時、州内の公立高校卒業生にマイノリティーが占める割合は38%で、カリフォルニア大学ロサンゼルス校入学者にマイノリティーが占める割合は29%だった。21年には、前者が58%に増加したのに対し、後者は33%にとどまっている。

最高裁のジャクソン判事の口頭弁論には説得力があったと、ジャヤクマルは言う。黒人学生と白人学生の間で人種が考慮の対象にならなければ、白人学生の体験だけが考慮され、黒人学生の体験は「検閲」される――それがジャクソンの発言の要旨だ。

ミシガン州では06年、住民投票で公立大学のアファーマティブ・アクションが禁止されて以来、ミシガン大学の学生の多様性に大きな影響が出ている。地元紙によれば、黒人学生の割合は7%から4%に低下。アメリカ先住民の学生の割合は90%減少している。

同じ現象が米各地の大学で起きるのではないか。ミシガン大学のエバン・キャミンカー教授(憲法学)は、今回の最高裁の判断に先立ち、本誌にそう懸念を語った。

「この16年間、特定人種を優遇しない形で、学生の多様性を強化する措置に多大な資金と努力を費やしてきた。だが私たちの大学は今も、アファーマティブ・アクション廃止の影響から立ち直っていない。ハーバード大学やノースカロライナ大学、アメリカの公立・私立大学のほぼ全てが、同様の状態になっても不思議ではない」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EUエンジン車禁止撤回の影響注視、競争環境変化に日

ビジネス

午前の日経平均は反発、前日安から買い戻し イベント

ワールド

中国最新空母「福建」、台湾海峡を初めて通過=台湾国

ワールド

トランプ氏、ベネズエラ出入港の制裁対象タンカー封鎖
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中