入管を責め難民を拒む矛盾...入管法改正問題の根本は「国民自身」にある
Facing the Consequences
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<国民の議論を二分する入管法改正問題の根本は、難民条約を批准しながら議論を先延ばしにしてきた国民自身にある>
6月9日、改正入管難民法が国会で成立した。3回目以降の難民認定申請者が強制送還の対象となることから、メディアではこの法律が人権無視につながると懸念されている。また、参院法務委員会で採決時の混乱もあったため、世間の印象は非常に悪い。だが私は入管だけが悪者にされる世論には首を傾げてしまう。
日本が1981年に難民の地位に関する条約(以下「難民条約」)を批准してから40年がたっている。だが日本で難民が認定される割合は諸外国よりもかなり低いことは、ここ最近の改正入管難民法のニュースで一般に広く知られることとなった。
なぜこんなにも低いのか、入管当局が非人道的だからではないのか、という話の流れになることが多いが、私自身は入管のせい「だけ」にすることは考えものだと思う。ビザの更新のため行かないとならないので、入管は在日外国人にとっては善くも悪くも身近な存在だが、日本人はどのくらい入管のことを知っているのだろうか。
入管とは以前は入国管理局という法務局の内部部局だったが、現在の正式名称は出入国在留管理庁で、法務省の外局である。収容された外国人は2019年までの数年は年間1000人を超え、長期収容も問題とされてきた(コロナ禍以降は一時的に激減)。
収容された外国人の死亡事件が相次ぎ、現在とてもネガティブな印象を持たれていることは周知のとおりだ。21年に名古屋入管の収容施設でスリランカ人のウィシュマさんが亡くなるまでの経緯が遺族と弁護士によって明らかにされたが、確かに人道的とは言えない、厳格すぎる扱いがされているように思える。
そして最近は長期収容の是正が目的だという入管難民法の改正への大きな反対デモが続いた。だが14年に収容中のカメルーン人男性が適切な医療を受けられず死亡したことなど、以前から入管の人権侵害は報道されてきた。それなのに国民の多くはずっと変わらず、この仕組みを維持し続けている与党を選び続けているのだ。
収容者の扱いだけではない。難民認定においても、日本は非常に厳格だ。皆さんは、今年3月に出入国在留管理庁がホームページで掲載した、「難民該当性判断の手引」を読んだことがあるだろうか。これは、難民条約を細かく読み込み、その一字一句を解説し、難民かどうかを判断するためのガイドである。全27ページのこの手引を頭に入れて審査することは、厳格にやろうとするほど迷いも多く、時間もかかり、認定は進まないだろうと思われる。