最新記事
イタリア

エロくて下品で豪快な「政界のドン」ベルルスコーニが逝く

Death of the “Teflon Don”

2023年6月20日(火)13時10分
バービー・ラッツァ・ナドー(ジャーナリスト、ローマ在住)

やがてベルルスコーニは、建設業で得た利益で放送局を次々買収してメディア帝国を築いていく。74年に立ち上げたケーブルTV局テレミラノや、80年に開局したカナーレ5などで、アメリカではやっていたシットコムをイタリアのお茶の間に紹介した。

さらに、今やイタリア最大の民放テレビ局となったメディアセットを立ち上げ、大好きな『ゼネラルホスピタル』や『ダラス』といったアメリカのドラマを放送させた。

その一方で、ベルルスコーニのテレビ局では、露出度の高い格好をした若い女性たちが、年配の男性出演者に取り入るような演出の番組が多く、イタリア社会の性差別を助長する役割も果たした。女性を無知でお飾り的な存在のように演出する手法は、今もイタリアのテレビに強く残る。

その後もベルルスコーニは、不動産、出版、商業施設などに投資を続け、さらに名門サッカークラブACミランを買収した。その中心となった持ち株会社フィニンベスト・グループは、傘下に150以上の事業を持ち、同じくらいの数の捜査や裁判、そして不正な会計処理による罰金の対象になってきた。

イタリア人のスポーツ熱にヒントを得て、中道右派政党「フォルツァ・イタリア(頑張れ)」を結成したのは94年のこと。狙いどおり、同党は選挙で大勝利を収め、ベルルスコーニは首相を4期務めた。

女性の地位向上に貢献?

公人となったベルルスコーニには、脱税や贈収賄やマフィアとの関係、未成年のコールガールとの性行為など、次々とスキャンダルが発覚した。

有罪判決を受けたことも少なくないが、自分が政権を握ったときの法改正で、無罪に覆した事件も少なくとも2つある。13年に脱税の有罪判決を受けたときは、高齢(当時76歳)を理由に、禁錮刑の代わりに社会奉仕活動を命じられた。

イタリアの女性の地位向上のために自分ほど尽くした人間はいないと、ベルルスコーニはしばしば豪語した。だが、世界の多くの国が、賃金格差や性差別の是正に動くなか、イタリアは大きく取り残されている。

世界経済フォーラムが毎年発表するジェンダー・ギャップ指数で、イタリアはいつも低い順位に甘んじている。他のヨーロッパ諸国と比べて女性の管理職や意思決定者は少ないし、育児休暇制度も十分とはいえない。イタリアでは制度的に、育児は女性の役割とされているのだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:戦闘で労働力不足悪化のロシア、インドに照

ワールド

アングル:フロリダよりパリのディズニーへ、カナダ人

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、米CPI受け 円は週間で

ビジネス

米国株式市場=3指数が週間で下落、AI巡る懸念継続
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 4
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 7
    【インタビュー】「4回転の神」イリヤ・マリニンが語…
  • 8
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 9
    機内の通路を這い回る男性客...閉ざされた空間での「…
  • 10
    中国の砂漠で発見された謎の物体、その正体は「ミサ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中