月額7万円の「韓国版・引きこもり対策」...壮大な社会実験が始まる
THE SOUTH KOREANS WHO WON’T LEAVE THEIR ROOMS
政策立案者たちは、統計上の数字をもっと掘り下げ、現状を見極めることが必要かもしれない。今の若者の状態は引きこもりなのか、それとも数年前から中国社会で広がる、無理に頑張らない生き方を指す「寝そべり主義」なのか。
今年3月、中国で16~24歳のうち無職者は20%近くに上り、同時期の韓国の若者の無職率7.2%を大きく上回った。
韓国の指導者たちは、社会の変革に伴う伝統的価値観の大きな変容、つまり集団主義よりも個人主義を、干渉より自由を選ぶ人がいる社会を受け入れる必要がある。
韓国政府の推定では21年には単身世帯の数が716万に上った。この数は全体の33.4%と、05年の20%より増加しており、50年には39.6%と40%近くになる見通しだ。米国勢調査局によれば昨年のアメリカにおける単身世帯は全体の29%だった。
社会的孤立の解消を目指す尹政権の政策はまだ十分議論されていないが、表面的には安心かつ成功した社会や若者にとってマイナスのように見られてしまうかもしれないと言うのは、ソウル女子大学校のデービッド・ティザード助教だ。
「近年高まる個人主義の風潮は、新語などをたどると7年前に生まれた。保守か革新かに関係なく、政府が税金を社会福祉に使う必要性に気付いたことも背景にある。この考え方は韓国では歴史が浅い」と、彼は言う。
非営利団体アジア・ソサエティー・コリアセンターのミシェル・シヒュン・ジューは、尹の路線は若者支援という公約を守り、大統領としての評価を高めることになるかもしれないと語る。
「韓国の若者には、未来を形作ることに参加できなかったために未来に悲観的になっている人もいる」と彼女は言う。
「一般社会も以前に比べて、これは誰かが介入すべき問題だと認識していると思う。昔だったら、『彼らは若い。彼らは立ち直れる』と言われていたところだが」
ジューは、一つの解決策として、政府と次世代が高校や大学で交わる機会を増やすことを挙げる。
「自分たちが孤独を感じていると気付いてすらいない状況だと、若い学生が声を上げることがとても難しい。たとえ彼らが統計上はそうカウントされていたとしても」