最新記事
韓国

月額7万円の「韓国版・引きこもり対策」...壮大な社会実験が始まる

THE SOUTH KOREANS WHO WON’T LEAVE THEIR ROOMS

2023年6月2日(金)13時10分
ジョン・フェン(本誌記者)

政策立案者たちは、統計上の数字をもっと掘り下げ、現状を見極めることが必要かもしれない。今の若者の状態は引きこもりなのか、それとも数年前から中国社会で広がる、無理に頑張らない生き方を指す「寝そべり主義」なのか。

今年3月、中国で16~24歳のうち無職者は20%近くに上り、同時期の韓国の若者の無職率7.2%を大きく上回った。

韓国の指導者たちは、社会の変革に伴う伝統的価値観の大きな変容、つまり集団主義よりも個人主義を、干渉より自由を選ぶ人がいる社会を受け入れる必要がある。

韓国政府の推定では21年には単身世帯の数が716万に上った。この数は全体の33.4%と、05年の20%より増加しており、50年には39.6%と40%近くになる見通しだ。米国勢調査局によれば昨年のアメリカにおける単身世帯は全体の29%だった。

社会的孤立の解消を目指す尹政権の政策はまだ十分議論されていないが、表面的には安心かつ成功した社会や若者にとってマイナスのように見られてしまうかもしれないと言うのは、ソウル女子大学校のデービッド・ティザード助教だ。

「近年高まる個人主義の風潮は、新語などをたどると7年前に生まれた。保守か革新かに関係なく、政府が税金を社会福祉に使う必要性に気付いたことも背景にある。この考え方は韓国では歴史が浅い」と、彼は言う。

非営利団体アジア・ソサエティー・コリアセンターのミシェル・シヒュン・ジューは、尹の路線は若者支援という公約を守り、大統領としての評価を高めることになるかもしれないと語る。

「韓国の若者には、未来を形作ることに参加できなかったために未来に悲観的になっている人もいる」と彼女は言う。

「一般社会も以前に比べて、これは誰かが介入すべき問題だと認識していると思う。昔だったら、『彼らは若い。彼らは立ち直れる』と言われていたところだが」

ジューは、一つの解決策として、政府と次世代が高校や大学で交わる機会を増やすことを挙げる。

「自分たちが孤独を感じていると気付いてすらいない状況だと、若い学生が声を上げることがとても難しい。たとえ彼らが統計上はそうカウントされていたとしても」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

インドの卸売物価、11月は前年比-0.32% 下落

ビジネス

日経平均は反落、ハイテク株安い 日銀利上げ観測でT

ビジネス

フジHD、33.3%まで株式買い付けと通知受領 村

ワールド

香港民主派メディア創業者に有罪判決、国安法違反で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中